海と共に暮らす人々は、そこに広がる世界がいかに深遠で美しいものかを知っています。海で活動する人たちに聞いた、その魅力と関わり方をご紹介します。

【Model】
海を体感するほどに、
伝えたいことが増えていく

遠くに富士山を望む逗子の海にはよく通っているというが、原風景には北海道の海がある。オロロンライン沿いの海は冷たくて、夏でも泳ぐと凍えてしまうけれども、どこまでも透明で美しかったという。

「自分には何が伝えられるんだろうって、すごく考えますね。モデルという仕事は、自分が興味ある物事を、ライフスタイルを通して提案することができるんじゃないかって」

海が好きだから、というよりも、まず海の環境問題に関心があったという、小野りりあんさん。親しみやすいアートに昇華することで、少しでも海の問題を知ってもらえないかと、プラスチックごみでアートを作り始めた。

「北海道育ちで、実は海よりも山に親しみがあったんです。でも、『スパイラル・クラブ』という環境コミュニティを仲間と立ち上げて、その中には海の魅力をすごく知っている人がいて。海の問題を伝えるには、まず自分が海のことを知らなければと、彼らと一緒に初めてのスキューバダイビングでグレートバリアリーフに潜りました。

海水温が上昇してサンゴが死滅する前に、美しい海の世界を知っておきたいと思ったんです。こんなにカラフルな世界が本当にあるんだって。海の生物の4分の一はサンゴ礁の周りにいることが納得できるほど多様な生き物に出会うことができました。今ではすっかり海の神秘に夢中です」

『スパイラル・クラブ』の活動を通じて見えてきたのは、環境意識を底上げするような発信を続けていくこと。プラごみアートのように、自分が楽しみながらも、世界を変えていく後押しがしたいと語った。

小野りりあん
モデル。青森県生まれ、北海道育ち。国際環境NGO〈350.org〉への参加を経て、そこで出会ったメンバーと環境コミュニティ〈Spiral Club〉を立ち上げ、環境にまつわる様々な活動を行っている。YouTubeでは、〈リリリズム〉というチャンネル名で環境トピックを発信中。spiral-club.com

【Ranger】
生物多様性の魅力を伝え、
海を守る意識を育む

柘植さん(右)と水川さん(左)。国立公園や世界自然遺産地域の保護管理、動植物の調査、環境教育などレンジャーの仕事は多岐にわたる。2人が好きだという栗生沿岸海域公園は、ハマユウが咲き乱れていた。

鹿児島県は屋久島で、自然環境保全に従事するレンジャーの柘植規江さんと、補佐のアクティブ・レンジャーの水川真希さん。“レンジャー”とは、アメリカの国立公園の「パークレンジャー」にルーツを持つ、環境省の自然保護官のこと。

柘植さんいわく「屋久島は、美しい砂浜から断崖の岩場まで海の景色もさまざま。サンゴや魚類の種類も多く、多様性豊かな海が魅力です」。

一方、巡視や調査以外に小学校で環境教育を推進している水川さん。「意外かもしれませんが、屋久島の子供たちは海で遊ばない子も多くいるんです。地元の方たちは、日常の光景だけにわざわざ行かない。ここに配属されて、海を知らない子が多いことに驚きました」

屋久島の海を愛する2人が、いま特に深刻に思っているのは海洋ごみの問題。「海流の関係で漂着物がとても多いです。漁具やプラスチックごみなど、拾っても拾っても流れ着く。定期的に掃除をしていますが追いつきません。それにより、毎年産卵に来ていたウミガメが浜に上がれないことも。海は当たり前にあるものではなく、守っていかなければならないものなのです」と柘植さん。

一方、水川さんも「意識を変えてもらうために、海の中の生物多様性の素晴らしさを子供たちに伝えたい。まずは知ってもらうこと。それが将来的に海を守ることにつながると思っています」

柘植規江・水川真希
柘植さんは環境省首席自然保護官として、日本全国の国立公園や国指定鳥獣保護区等に数年おきに異動する。水川さんは、学生時代にマングース研究をしていたという動物好き。九州地方環境事務所のサイト内にある、「アクティブ・レンジャー日記」で活動の様子がわかる。kyushu.env.go.jp