「偏食」しないでついてきて! 意外と身近な「偏微分方程式」の世界

いつでもあなたのそばに、偏微分方程式
斎藤 恭一 プロフィール

もちろん、そんな私の感動にはおかまいなく先生は「変数分離法」という名のふしぎな解法で偏微分方程式を解いてみせた。講義の終了時間がきて、先生はあっさり教壇を降り、帰って行った。

「場」という一文字が私を変えた

「うちの学科に、すばらしい講義をする先生がいるよ」と自慢げに私に教えてくれたのは、電気工学科のS君であった。

S君とは浪人生時代に予備校で机を並べた仲であった。さっそく、その講義に潜り込んだ。講義に現れたのは高木純一というお名前の先生だった。高木先生は電磁気学の大家で、土曜日の午前中、電気工学科の学生に「電磁気学」を講義していた。

講義は静かに始まった。小柄な老教授の高木先生は、大きな教室の大きな黒板の中央に、“場”という大きな文字を書いた。「今日はこれを教えます」と言って先生が語りだしたのは、場というものの何たるかだった。

“この世の中で起きている現象を、舞台に載せて、観客として観る”という、場のイメージを私たちに教えてくれたのである。

それまでは、場といえば、風呂場とか高田馬場くらいしか私は思い浮かばなかった。講義のおかげで、私は場の中で起きている物理現象を外からのぞき込めるようになった。さらには、現象を包み入れる空間座標が時間軸の上で移動していくイメージをもつことができるようになった。

安全な装置を作るための偏微分方程式

私の所属していた応用化学科では3年生になると、工業化学コースと化学工学コースという2つのコースに分かれるシステムになっていた。私は化学工学コースに進んだ。化学工学コースに進めば、石油精製コンビナートの装置の設計ができるとか、中東に出かけて海水を淡水化するプラントの建設に参加できるとかという、たいへんいい加減な考えをもとに進路を決めていたのである。