「偏食」しないでついてきて! 意外と身近な「偏微分方程式」の世界

いつでもあなたのそばに、偏微分方程式
斎藤 恭一 プロフィール

私は学生時代に「化学工学」という分野を勉強した。その後、大学の研究室で高分子吸着材の開発研究を35年も続けた。吸着材の設計やその性能の解釈に、偏微分方程式から学んだ「事象は時間や空間の関数で表される」という考えが役立った。

この本は、頭の中に描ける具体的な事柄を、偏微分方程式を使って記述する点に特長がある。厳密すぎる記述にこだわっていない。あくまで偏微分方程式を使う立場から書いている。

偏微分方程式は「食わず嫌い」されている

「偏見」、「偏食」など、「偏」の字がついていると、あまりよいイメージをもたないためか、「偏微分方程式」も「偏見」をもたれている。学生さんは偏微分方程式の中身を知らないのにはじめから敬遠している。食わず嫌いの「偏食」である。

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そういう私も学生の頃、偏微分方程式の名前を聞いただけで「なんじゃそれ? 難しそうだなあ」と思った。それなのに、今回は「偏微分方程式」ファンクラブの会員として、偏微分方程式のことをみなさんになっとくしていただく役回りを引き受けることになった。

大学入試で私が選んだ学科は、応用化学科であった。当時、公害問題が世間で騒がれ、人気の一番ない学科だったので私は入れた。その応用化学科の2年生のとき、一般科目に「応用数学」という科目が必修科目として用意されていた。

ちなみに「応用数学」を習う前の1年生のときの数学は「解析学」という名の講義で、そこでは「イプシロン─デルタ論法」を教わった。これがまったく習う意味がわからないためにつまらなかった。

数学は、実用に役立つ!

一方、「応用数学」の講義はそうではなかった。背が高くてがっちりした体格の数学科の先生が黒板に書き出して解いていったのは、棒の長さ方向の非定常熱伝導を表す偏微分方程式であった。これが偏微分方程式との出会いだった。ついでに「初期条件」と「境界条件」という数学用語もこのときはじめて知った。

その日は体調がよかったせいか、その先生が淡々と展開していくプロセスをノートに写しながら、「こりゃすごい!」と思った。このときの講義の感動がいまにつながっている。

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まずは、数学は実用に役立つんだとわかったこと、それから、「棒がだんだん温かくなる」という“曖昧な”世界から、「棒の端から◯◯mの位置は◯◯時間後に◯◯℃だけ温かくなる」という“明確な”世界へジャンプできたこと、これに感動したのである。