Photo by Getty Images

「偏食」しないでついてきて! 意外と身近な「偏微分方程式」の世界

いつでもあなたのそばに、偏微分方程式
熱いコーヒーに砂糖を溶かしたときの溶け方、キュウリやスイカを冷蔵庫で冷やしたときの冷え方……。私たちの生活のありとあらゆる場面で、知らず知らずのうちにお世話になっているもの、それが「偏微分方程式」。

一見すると難しそうに見えるこの「偏微分方程式」を、私たちの身の回りにあるものを例として楽しく、わかりやすく解説してくれる数学書『道具としての微分方程式 偏微分編』がブルーバックスから今月ついに発売です!

今回は、その「まえがき」をWeb用に再編集して特別公開! あなたの身のまわりの不思議、偏微分方程式を使って解き明かしてみませんか?

偏微分方程式への「偏」見をやめた日

「偏微分方程式」は大学数学のなかで、多くの学生から最も嫌われる内容の一つである。当然、私も当初、自分には関係のない数学だと思っていた。

しかし、「応用数学」という名の講義で、「長い棒の両端を温め始めてから、時間が経つにつれて上がっていく棒の温度を、偏微分方程式を解いて端からの距離を代入すれば計算できること」を知って驚嘆した。

そこから「偏」微分方程式への「偏」見をやめた。コーヒーにミルクを溶かすときも、風呂に浸かって温まっているときも、風にあおられて歩いているときも、偏微分方程式は私に寄り添っているんだ!

Photo by Getty Images
拡大画像表示

偏微分方程式、スタンドバイミー(Stand by Me)。こうして私は「偏」微分方程式を「偏」愛する「偏」人になった。

というわけで、本書は、世界でもっとも丁寧に、愛情をもって偏微分方程式を語っていると自負している。

ほとんどの人は「道具」として使う

数学なる学問は抽象化、記号化を得意とする学問だと思う。コンパクトに、スマートにまとめていくのが数学の特徴なのに、この本はそれに逆行している。

数学者から見ると、ばかばかしい内容である。私には数学者の友人はいないので非難の声は耳に入ってこない。だから、私は思い切って数学の本を書けるわけだ。

大学で偏微分方程式を習う学生のほとんどは数学科へは進まない。将来、道具として偏微分方程式を使う可能性があるからそれを習うのだと思う。

「道具として」偏微分方程式を使う Photo by Getty Images
拡大画像表示

そうした将来のニーズをもっている学生に、ニーズをほとんど感じていない数学科の先生が教えるという教育システムはうまくいかないだろう。数学科の先生に「学生さんは神様です」というサービス精神がなければ普通の学生を満足させることなど到底できない。