生徒全員の前で改めて謝罪を

ぼくと校長は一緒に品川の学校に赴任してきました。校長は、学校現場に戻る前は、東京都教育委員会の中枢で教育行政に携わり、国の教育の指針を検討する中央教育審議会や、学習指導要領の執筆にも関わるなど、教育界におけるトップランナーとしてキャリアを積んできた方でした。にもかかわらず、「自分はもう一度現場に戻りたい」と自ら希望して校長となり、現場に戻って来た志の高い教育者でした。

だからこそ、ぼくら教員の至らないところも、いいところもすべて把握し、それぞれのキャラクターに応じ実に見事に指導していく校長でした。
この校長と出会えたこと、3年間同じ現場で一緒に仕事をしてきたこと、そして、ぼくの成長を願って育ててもらったことは生涯の宝だと今でも思っています。

-AD-

緊急保護者会で保護者に配布した謝罪文を、ぼくは職員室の自分の机の一番目立つところに貼り続けました。
人生最大の失敗と一生向き合っていこう
そう思いました。その謝罪文だけは、捨てず、今も大切に持っています。

2学期の始業式。ぼくは子どもたち全員の前で改めて謝罪し、頭を下げました。その時がぼくの人生のリスタートだったと思います。

Photo by iStock

校長の言葉を自分に言い聞かせながら、ぼくは仕事の仕方はもちろん、教師としての自分自身のすべてを見直しました。

当時は、暴力こそふるわなかったものの、子どもたちを叱ったり、怒鳴ることはありました。彼らへの愛情があれば許される。それは「よくなってほしい」「成長してほしい」という自分の愛情として伝わると考えていました

でも、何か違う。子どもを委縮させて、教師が思い通りに動かすやり方がいいわけがない

揺れて、悩んでいるときに、親交のあったオシムさんが指揮を執っていたジェフ市原で育成コーチを務めていた池上正さんの書籍を知りました。
叱らず、問いかける』という本です。

指示命令をせず、子どもに考えさせて、問いかける。子どもと対等であることの大切さが書かれていました。ぼくは何十冊と買い込んで、教員仲間に配って歩きました。
「自分も、このやり方で子どもに接するんだ」という決意表明みたいなものです。「森田先生、この本みたいにやると言いながら、違うこと、やってるじゃん」と言われないようする。戒めの意味もあったかもしれません。