緊急保護者会で

成績処理のミスは、子どもたちの大事な成績をこんなに簡単に間違えるのか、個人情報を慎重に取り扱うことができないのか、と学校の信用を著しく失墜させる事故です。要するに、ぼく個人の問題ではなく、学校を管理する校長の責任も厳しく追及される事態となります。

それでも、校長は覚悟を決めて、事実の公表と謝罪しかないと、全面的に受け止め、保護者、教育委員会などに東奔西走で動き、真摯に向き合う姿勢を貫き続けました。

緊急保護者会では、保護者に事故の全容を明らかにし、謝罪しました。保護者会が終わった後、学級長のお母さんから、声をかけられました。

「これからの先生の姿を息子と一緒に見ています。信じています。そして、期待しています。息子がこう言ってましたよ。先生、ライオン倒しそびれたなって」

本当にその通りだと思いました。自らを過信し、浮ついた気持ちでいたそんな甘い、青い自分の目を開かせてくれた。申し訳ない気持ちでいっぱいになりながらも、ぼくと本気で向き合ってくれる彼に対して感謝の気持ちでいっぱいになりました。

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「今、あなたは変わらなければならない」

保護者会の片付けを終えた時、校長がぼくを呼びました。
すると、テーブルの上に、夏休みの特別授業で子どもと保護者が一緒に作ったパスタが置かれていました。子どもたちが校長先生へと届けに来たのでしょう。緊急保護者会のために、出来たてを食べることができなかった校長は、

「森田さん、一緒に食べよう」と皿に取り分けてくれました。パスタはもうすっかり冷めていていました。それでも、一流シェフと一緒に作ったパスタは十分に美味しかったのだ思います。しかし、口に運んだパスタがなかなか喉を通ってくれませんでした。

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「森田さんは今、変わるときだよ。あなたはいろいろなことをやってきた。教員としての感度も高い。あなたを見ていれば、それはわかる。でも、今、あなたは変わらなければならない。ここで変わろうとしなければ、ここで終わる

やさしく諭すような口調ですが、ぼくははっとさせられました。フォークを持つ手が震えていたと思います。

「あなたは自分が抱えている仕事をいつでも片付けられると思っているから、さまざまなことをギリギリまで貯めておいて一気にパッとやってしまう。でも、そのような仕事の仕方は、あなた自身を苦しめるし、周りの人に(ミスを)気づくチャンスを与えられないよね」

「自信をもつことはいい。子どもたちと接する姿もいい。実際に、あなたのクラスの子どもたちの顔が変わって来たと感じている。でも、今、あなたは自分と向き合い、変わろうとしなければならないのよ」

その時、悔しくて、情けなくて、そして、申し訳なくて、ぼくは校長の前でぽたぽたと涙を流しました。教師になってから、職場で泣いたことなどなかったぼくですが、涙が止まりませんでした。校長が訥々と、教員としての道を説いてくれたこと、そして涙を含んだあのパスタの味は生涯決して忘れないと思います。