子どもたちの興味の種をまくことが自主的な学びにつながる――自らが宿題もやらない小学生時代を送り、高校時代にある興味を持ったことよって猛勉強を始めた経験をもつ森田太郎さんは、そんな思いで公立小学校の教師になった。そして「タロー先生は型破りだけど、子どもたちが猛然と勉強に取り組む」と話題になっていた。ただ、そこに至るまでに、「教師として致命的な失敗」をしており、それが、型破りながら子どもに寄り添う今の姿を作ったという。

それから13年。現在は公立の枠にとらわれず、もっと「興味の種」をまくべく、三鷹にある話題の「探究学舎」に転職。そこで人気講師として働いている森田さんに、その失敗について率直に伝えてもらう。

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都心の人気校へ転任して見た異様な光景

失敗。
耳にするとネガティブな言葉です。
でも、この失敗することで人は成長のきっかけを得ることもあります。

小笠原諸島母島の小学校を離れるとき、「島の次は都会の学校に行こう」と決めました。その理由は、島でしかできない教育を学びたい、実践したいと思って島に向かった時と同じです。都心の学校だからこそできること、新たな教育環境の中で挑戦したいという気持ちがあったからです。

赴任先は、教育改革特区として注目を集めていた品川区。学校選択制を導入しており、ぼくが赴任した学校は地域の人気校でした。従来の学区を越えて遠くから子どもたちが通っていました。そのため、周辺の学校に比べ、児童数が飛び抜けて多い学校だったのです。

ぼくは赴任早々に6年生の担任になりました。異動してきた教師がいきなり6年生担任という時は、たいてい何かがあります。その理由を、ぼくは着任早々の始業式で知ることとなります。

名門校だからなのか、お行儀のよい子が好まれる風潮が学校全体に漂っていました。教室移動から、整列、話の聞き方、その全てが統制されていて、ピシッとしているのです。

(写真は本文とは関係がありません) Photo by iStock

正直、ぼくには異様な光景に映りました。
「子どもらしくない」

ところが、ある一角に目を映すと、実に子どもらしい子どもたちがいるのです。
ところどころ列が乱れていて、隣同士でおしゃべりをしている子もいて、どこか自分らしさが漂い、場の緊張とは異なりリラックスしているのです。
それが、ぼくが担任することになった6年生の子どもたちでした。

「子どもって、こうだよね」

「伝統を乱す子ども」というレッテル

しかし、この6年生たちは、教師や地域の大人たちから「この学校の伝統と品格に乱す子どもたち」というレッテルを貼られていました。実際に耳にしたことで、ぼくは体の内側からみなぎる力を感じました。まさに、この子どもたちに出会うためにここに来たんだと。

そこで、ぼくは自らの気持ちを子どもたちに正直に伝えました。
「この6年生はと一括りにされて、◯◯小学校の子どもらしくないと言われ続けてきた君たちは、悔しくないか? 腹が立たないか? ぼくは正直、腹立たしい」
その時の、子どもたちの真剣な眼差しは今でも覚えています。だからこそ、ぼくはこう続けました。

「卒業する時に、ぼくたちは十分に成長したし、立派に生きてきたんだと周囲の大人たちを見返してやろう」と。

それからの日々の中で、ぼくは子どもたちがやりたいことは何かを考え、得意なことを、好きなことを徹底的に伸ばすことを心がけました。なぜなら、十分に褒められ、認められてこなかったことで、彼らが失っていた自己肯定感を取り戻すことが重要だと考えていたからです。

合言葉は「一日一匹のライオンを倒さなければならない」。

とにかく、何事にも全力で取り組まなければ、圧倒的な力をもつ大人たちを見返すこともできないと。
そんな思いに、子どもたちは応えてくれました。学級長を中心にクラスはまとまり、教師がではなく、子どもたちが自分たちでクラスを動かせる、そんな力を見せてくれました。