皇室記者が現場で感じた、新天皇夫妻と上皇夫妻の「大きな違い」

「お堀の内側」で目にしたもの
大木 賢一 プロフィール

美智子さん自身が「天才女優」と言ってもいいと思います。自分がどう見られているか絶えず意識し、自分たちを報じるものにはほとんど自ら目を通していると聞きます。「自分が一番目立っていないと気が済まない人」と評する人も何人もいます。

天才女優ですから「慈悲深い聖母」になることもできました。「平成の天皇皇后像」は、こうした美智子さんの演出能力で形作られたと考える識者は少なくありません。阪神大震災でのスイセンの花、東日本大震災でのハマギクの花。被災地との交流のストーリーも、へそ曲がりな私の目には「用意された通りに書かされた」と屈辱を感じることがありました。

新時代の天皇像

新しい天皇夫妻には自己演出にあくせくするような姿勢はなさそうです。いかにも自然体の夫婦のように思え、私は新時代の「新しい天皇像」に期待しています。

即位後いくつかの地方訪問に同行し、気付いたことがあります。施設訪問でも何かのレセプションでも、前天皇夫妻は「それぞれが一人一人に相対する」姿勢だったのに対し、新天皇夫妻は「2人一緒に、気がつくとみんなに囲まれて笑っている」のです。欧州的なフレンドリーな王室に近づいている。そう言うと反発する勢力もあるでしょうが、私はそれでいいのではないかと思います。

〔PHOTO〕Gettyimages
 

平成の天皇夫妻がああした姿を見せたのは「生き残り戦略」だったと思います。国民の関心を失うことは皇室にとって一番の脅威のはずです。必死に考えた結果が「寄り添う」ことであり、その姿を見せることが時代の要請だったのかもしれません。

新しい天皇夫妻はもっとナチュラルな道を歩むでしょう。欧州の記者が王族の子どもたちに気軽に手を振るように、記者との距離も縮めてくれたらいいなと思います。新しく築かれる皇室の中で、みんなが真の自分らしく、幸せな人生を生きてほしいと願っています。

この文章では、意図的に敬語を排し、普段の新聞の基準とは異なる表記をしてきました。過剰な敬語を使いながら批判を含む言説を展開するのはほとんど不可能です。天皇の在り方や皇位継承に関する議論は続くのですから、無用なタブーは極力排し、考え続けなければならないと思います。