皇室記者が現場で感じた、新天皇夫妻と上皇夫妻の「大きな違い」

「お堀の内側」で目にしたもの
大木 賢一 プロフィール

記者会で目にしたもの

当時、皇太子夫妻は雅子さんの適応障害のため2人そろっての活動が極めて少なく、一方で高級レストランに通っているといったバッシング報道がされていました。

記者会でも「平和を希求し、戦没者慰霊や被災者への寄り添いを続ける素晴らしい天皇、皇后両陛下」との比較で反感を抱くのか、平場ではほとんどの記者が雅子さんを「雅子」と呼び捨てにしていました。皇太子を「息子」とか「長男」と呼んではばからない人物も、前天皇夫妻の周辺にはいました。

〔PHOTO〕Gettyimages
 

私は不愉快でした。皇室という閉ざされた世界で生きている人に対してあまりに失礼だと思ったからです。姓さえ奪われて名前だけになった女性に、なぜ一言「さん」を付けることができないのか。そんな記者が「弱者に寄り添う」などという記事を書いても私は信用できません。

記者も入れ替わり、新天皇が即位した今、このような記者はもうおらず、みんなが夫妻を敬愛しているそうです。しかし、もし仮に私を含めたマスコミ全体が「一番上の人になったから」のような気持ちに流されてしまっているとしたら、それは世間から「手のひら返し」と言われても仕方のないことであり、中身のない称賛報道が、また繰り返されるだけではないでしょうか。

前天皇夫妻はあまりにも称賛されすぎたと思います。誰が天皇になろうが、おかしいと思うところがあるなら指摘していくこともメディアの重要な使命のはずです。自戒も込めてそう思います。

記者と皇族の「距離感」

「退位の意向」でマスコミが大騒ぎになった当日、私が所属する共同通信編集局の幹部がこんなことを言いました。「天皇の次の定例会見はいつなんだ!」。天皇本人の真意がそこで明らかになると考えたのでしょうが、閣僚ではないのですから、天皇に定例会見などというものはありません。会見は、毎年の誕生日前と、海外公式訪問の前だけです。