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皇室記者が現場で感じた、新天皇夫妻と上皇夫妻の「大きな違い」

「お堀の内側」で目にしたもの

天皇夫妻は日ごとにその安定性を増しているように思えます。皇后となってからの雅子さんが公務をほとんど完璧にこなしていることに驚きの声がありますが、私には予想どおりのことでした。

「本当は雅子さんはもう、なんだってできますよ」。5年ほど前、夫妻に近い筋からそう聞いていました。前天皇夫妻に過剰な遠慮をする必要がなくなれば、雅子さんは必ず復活する。それは現役の担当記者をしていた十数年前から信じていたことでした。

 

「生前退位」が明らかにしたこと

私は2008年までの約2年間、宮内庁の常駐記者でした。70代半ばだった前天皇の公務軽減策が提案されていましたが、前天皇は簡単には首を縦に振りませんでした。

生真面目な性格を考えれば、思うとおりの活動ができなくなった時に「位を譲る」ことは、容易に予測できたようにも思えますが、当時は考えもしませんでした。昭和天皇の闘病の記憶があり、天皇とは最後まで天皇であるのが当然だと思っていたのです。

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初めて「退位の意向」が報じられた時は、驚き以上の激しい感情がありました。「政治的発言に当たらないのか」という憲法上の疑義とともに、メディアを利用して自ら世論の醸成を図っているとしか思えなかったからです。その気持ちは今も変わりません。

当時の宮内庁幹部は記者に囲まれ「報道のような事実はない」「陛下のそのよう
なお気持ちは聞いたことがない」と完全否定する立場を取っていました。この言葉はいまだに修正されたわけではありませんが、結局前天皇は退位してしまいました。

2016年8月8日のビデオメッセージには「退位」「譲位」の言葉は一つもありませんが、国民のほとんどが「お気持ちはよく分かりました」という反応を示しました。事前にさんざん報道されていなければ起きえない現象です。こうした筋書きを考えたのが誰だったのかと考えると、私は何とも言えぬ反感をぬぐえなくなるのです。