「科学教育で最も大切なことは、子どもに感動を与えること」

累計85万部超え、科学の伝道師の言葉
「科学教育で最も大切なことは、子どもに感動を与えることだと思います」

こう語られた後藤道夫先生は、「身近にあるものだけを使い、誰がやってもできる」手品の数々を紹介した『子どもにウケる科学手品』シリーズを上梓し、累計で85万部を超えるベストセラーに育てられ、2017年に逝去されました。

後藤先生の熱い心を、これからの世代の子どもたちにも伝えたい。その思いから、ブルーバックス編集部は、『子どもにウケる科学手品 ベスト版』を世に送ることといたしました。

後藤先生の言葉を後世に残すため、底本となった『子どもにウケる科学手品77』(1998年)の「まえがき」「あとがき」を完全再録します。

子どもにウケる科学手品77——まえがき

相対性理論で有名なアインシュタインも、発明王エジソンも、科学の素養は、子どものころの親子のふれあいの中で培われました。

父親からコンパス(方位磁針)をあたえられたアインシュタインは、その針がいつでも北を指すことに驚きました。目にも見えず、手でもさわれない力が作用していることを知ったこのときの経験が、いかに印象深いものであったか、のちに彼自身が語っています。

エジソンは、母親から家庭でできる科学実験の本をプレゼントされ、そこに載っている実験をすべて自分でおこない、科学の楽しさを身につけました。

本書は、日々の親子のふれあいの中で、子どもに科学の不思議さ、楽しさ、面白さを知ってもらうための材料を、あなたにこっそり提供するものです。

紹介する77の科学手品には、タネや仕掛けがいっさいありません。それなのに、信じられないような不思議な現象が、子どもの目の前で展開されます。まさに、「目にも見えず、手でもさわれない力」の存在を子どもが実感することでしょう。

その昔、学校で「理科」をよく勉強したおとななら、それらが大気圧であり、重力であり、静電気であることを見抜けるでしょう。しかし、子どもは、まだ、そのほとんどの存在を知りません。知っていたとしても、それらの力がこんな形で身の回りのものに影響をおよぼしているとは、思ってもみないでしょう。

子どもは目を輝かせて、手品に見入るはずです。そして、なんでそんなことが起こるのか、懸命に考えようとするでしょう。そうしたら、すぐに答えを教えずに、ぜひ、子どもと一緒に考えてあげてください。

いまの子どもたちの多くは、「理科」は暗記科目だと思っています。テストを中心に回っている現在の教育制度のもとでは、しかたのないことかもしれません。ただ、数年前から、「青少年のための科学の祭典」が全国の多くの先生方の協力で開催されるようになり、東京の科学技術館を例にとれば、1日に1万組もの親子の参加があるのは、そういった現状を憂いている人たちが少なからずいることを示していると思います。

また、平成10年からは、科学技術振興事業団による「サイエンス・レンジャー」の制度も発足し、日本各地で、地域に根ざした科学教育がはじまっています。今後に期待したいものです。

 

本書で取り上げた77の科学手品は、筆者のオリジナルのものもありますが、すでにさまざまな媒体で取り上げられているものも少なくありません。しかし、筆者はそのすべてを何度もやり直し、誰でも、簡単にできるように、工夫し、改良しました。そして、当初は100種を超えていたものの中から、危険すぎるものや、特殊な装置・技術を要するものを除き、親子で楽しめると思われるもの77種をよりすぐりました。

本書が、科学手品を通して、親子の対話を豊かにし、社会のよりよい発展のための道しるべとなれば幸いです。

『子どもに受ける科学手品 ベスト版』