海と空、緑が描く
大迫力の風景を探しに。

江戸時代からの風景を守り続ける春日集落。棚田での稲作が潜伏キリシタンたちの暮らしを支えた。

海と山に囲まれた平戸には豊かな自然が広がっている。今回の旅は平戸島から生月島へ渡って島を一周するドライブも楽しみの一つ。

根獅子の浜から北上すると、海へと続く山あいに美しい棚田が目に飛び込んできた。ここは春日集落の潜伏キリシタンたちが開墾した棚田で、当時の景観をそのまま残す貴重な場所。禁教時代の村人たちは、山岳仏教信仰の対象であった安満岳を拝むことによって、キリスト教への信仰を密かに続けたという。

彼らはキリスト教解禁後もカトリックには復帰せず、先祖たちから伝え聞いた習わしや日常を守り続けてきた。今も集落には神仏の信仰対象である石碑や石祠などがあり、仏教、神道、キリスト教が共存しているという。

平戸島と生月島を結ぶ生月大橋。部材同士を三角形につなぎ合わせたトラス構造の橋としては世界最大規模の径間を誇る。海の色とマッチしたスカイブルーが特徴。

そこから、青い三角形が連なった生月大橋を渡り、ひたすら生月島の西海岸を走る。この道は農免道路のため、周辺に人家が少なく、信号や電柱などがほとんどない。ドライブコースとしても人気で、水平線を眺めながら走ることができる。

「塩俵の断崖」を眺められる「塩俵憩いの広場」の展望台にて。「海を眺めているとリフレッシュできます」と大橋さん。自然と笑顔がこぼれる。

しばらく運転を続けていると、なんだか不思議な形をした断崖が見えてきた。「塩俵の断崖」だ。五~七角形の断面をした高さ約20mの巨大な岩の柱が垂直に立ち、それが約500mにもわたって連なっている。

ちなみに丸太のような岩柱が塩俵のように見えるのが名の由来だそうで、遠くから見ても圧倒的な迫力。断崖に向かって打ち寄せる波を眺めていると、大橋さんは海のそばで暮らした日々を思い出したという。東京の忙しい生活から少し距離を置き、葉山に住んでいた時期があったとか。

「私は海に対する憧れがあって。平戸の海は葉山とはまた違うダイナミックさがありますね。自然を近くに感じられる生活ってやっぱりいいなと、ふと思い返していました」

100mの断崖絶壁に建つ大バエ灯台。夕暮れ時には白亜の灯台が水平線に沈む夕日によってオレンジ色に染まるという。

さらに車を走らせ、生月島の最北端へ。島の最北部は高さ100mの断崖になっていて、その上に白い「大バエ灯台」が建っている。

この灯台には全国でも珍しく展望台が設置されていて、360度視界が開けた景観を眺望できる。眼下には紺碧の大海原が広がり、海の向こうには度島や壱岐、対馬などの島々が見渡せて、「果てまでやってきたなぁ」としみじみ思わせてくれる。

ちなみに灯台の名前に入っている「バエ」は「蠅」ではなく、海に突き出た岬状の岩礁を指す方言「碆」のこと。灯台の建つ大バエ鼻断崖は数百万年前、伊万里方面からの噴火で流れてきた溶岩が荒波を受けて形成されたものらしい。今は朝鮮半島と日本を行き来する渡り鳥の中継地にもなっていて、様々な鳥に出合うことができる。

生月島をドライブしている途中に出合った平戸牛。雄大な自然で育つ、長崎自慢の高級和牛だ。

PROFILE

大橋利枝子 Rieko Ohashi
スタイリストとして多方面で活躍し、2012年よりデザイナーとしても活動。2018年秋より自身のブランド〈fruits of life〉をスタート。著書に『おしゃれって いいもの』(文化出版局)ほか。


●情報は、2019年10月現在のものです。
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Photo:Norio Kidera Text:Mariko Uramoto Edit:Chizuru Atsuta