〈カトリック紐差教会〉の入り口。天井には花と葉の装飾、丸窓には花柄のステンドグラスが施され、親しみやすい雰囲気。/カトリック紐差教会 長崎県平戸市紐差町1039 ☎0950-28-0168

そして、そこから車で10分の場所にある〈カトリック紐差教会〉へ。東洋屈指のロマネスク様式の教会で、大規模な天主堂が有名。設計は日本の教会建築の第一人者である鉄川与助。美しい折り上げ天井には彼の特徴である愛らしい花柄模様が描かれている。紐差エリアは仏教徒の集団改宗も多かったといい、この教会はキリスト教の空間に仏教的要素が共存したような造りになっていた。

平戸瀬戸を見下ろす高台に位置する〈田平天主堂〉はイギリス式に積まれた赤レンガと瓦屋根が組み合わさっている。和と洋が混在した教会だ。/田平天主堂 長崎県平戸市田平町小手田免19 ☎0950-57-0254

次は、鉄川与助の集大成といわれる〈田平天主堂〉へ。荘厳な赤レンガ造りの教会で、ここは黒島と出津から移住してきた敬虔な信徒たちが自ら土地を開墾し、海岸からレンガなどの材料を担ぎ上げ、3年の歳月をかけて建設したという。建設が始まったのは、禁教が解かれたずいぶん後だが、信仰の自由を手にした潜伏キリシタンたちはどんな気持ちでレンガを運んでいったのだろうと思いを馳せると胸が熱くなる。

平戸では、禁教が解かれたあと、あえてカトリックに復帰をせずに禁教時代の信仰スタイルを継続する“かくれキリシタン”もいた。現在、その信仰を継ぐ人は少数だが、殉教地や聖地などは彼らによって今も大切に守られている。その一つが「かくれキリシタンの里」と呼ばれる根獅子地区。この地域ではほとんどの家がキリシタンだったそうで、密かに信仰が続けられていた。だが、厳しい取り締まりにより、多くの殉教者が出た。

“快水浴場百選”に選ばれたこともある根獅子の浜。約1kmも続く白い砂浜は夏には海水浴客で賑わう。近くにはかくれキリシタンの資料を展示する〈平戸市切支丹資料館〉が。
〈平戸市切支丹資料館〉は根獅子に住む元信者から提供された貴重な御神体の数々を展示。隣には聖地「ウシワキの森」がある。/平戸市切支丹資料館 長崎県平戸市大石脇町1502-1 ☎0950-28-0176

このエリアにある美しい海岸「根獅子の浜」は、キリシタンたちが処刑された場所でもある。沖の岩場で処刑されたキリシタンたちが海に打ち捨てられると、曇天だったにもかかわらず岩に陽が射し、魂が天国へ召される様子が見えたという言い伝えがあり、その岩は「昇天石」という呼び名で大切に守られている。

「こんなに美しい海に悲しい歴史があっただなんて信じられないです」

どこかもの悲しくも見える海の表情が忘れがたいものになった。