古くから中国やポルトガル、オランダなど諸外国との交易の場として栄え、長崎初のキリスト教伝来の地でもある、平戸。日本と海外の空気が混ざり合った独自の文化と美しい自然が共存するこの土地をデザイナー・スタイリストの大橋利枝子さんと一緒に巡りました。

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温かさの宿る教会と
受け継がれた祈りの心。

平戸は長崎初のキリスト教伝来の地としても知られている。そのきっかけを作ったのも松浦家だ。

25代隆信公は1550年にポルトガルとの貿易を始めたのと同時に、平戸を訪れたフランシスコ・ザビエルらの布教活動にも理解を示し、家老や親族をはじめ、領地に住む人々に改宗を許したという。

宣教師たちの熱心な活動によって多くのキリスト教信者が生まれたが、その後、伴天連追放令が発令され、キリスト教に寛容だった隆信公が亡くなったことも重なり、厳しい弾圧が始まる。

以降、禁教が解けて信仰の自由を勝ち取るまでの約250年間、悲しい潜伏の時代が続くのだ。指導者がいない中、密かに信仰を継承し続けた人々。その想いをたどるため、平戸に点在する美しい教会を巡ることにした。

坂道を登って〈カトリック宝亀教会〉へ。建物の正面はレンガ造りだが本体は木造瓦葺。この教会も日本と西洋の融合を感じることができる。/カトリック宝亀教会 長崎県平戸市宝亀町1170 ☎0950-28-0324

最初に向かったのは、平戸で最も古い木造教会の〈カトリック宝亀教会〉。国道から右折した道はかなり細く、少々不安になりながら進むと、小高い丘にひっそりと佇む教会が見えてきた。車を降りて坂を登ると、礼拝を終えたばかりの人とすれ違う。近くの寺へお参りに来たついでに立ち寄ったのだという。

「私はキリスト教信者じゃないんですけど、ここは来ると落ち着くから、たびたび訪れるようにしてるんです」という。平戸ではこんなふうに宗教が重層的に存在して、人々の暮らしに教会が根付いているようだ。

〈カトリック宝亀教会〉の側廊部には床面まである両開き窓、教会建築には珍しいテラスも。

光を集めるために南向きに建てられた〈カトリック宝亀教会〉は白い漆喰とレンガ色のコントラストが印象的。聖堂本体は木造で、側面にエメラルドグリーンのテラスが備わっている。中に入るとこうもりが羽を広げたような天井が設けてあり、静寂の祈りの場があった。

昔から、仕事やプライベートでヨーロッパをたびたび訪れている大橋さんは教会にも足を運ぶそうだが、「西欧の教会で感じた荘厳な雰囲気とはまったく違う、素朴さがあってなんだか落ち着きますね。さっきの方がおっしゃっていた意味がすごくわかる気がします」