古くから中国やポルトガル、オランダなど諸外国との交易の場として栄え、長崎初のキリスト教伝来の地でもある、平戸。日本と海外の空気が混ざり合った独自の文化と美しい自然が共存するこの土地をデザイナー・スタイリストの大橋利枝子さんと一緒に巡りました。
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海が近づけた外国文化、
茶の湯に傾倒したお殿様
九州西端の町、平戸。南北に細長い平戸島とその周辺に点在する約40の島々などからなる市域で、現在の人口は約3万人。小さな都市なのだが、実は日本でいち早く、国際貿易で栄えた土地だった。
「日本の最果ての小さな町に、そんなグローバルな時代があったなんてまったく知りませんでした」
と驚くスタイリストの大橋利枝子さん。昨年、ファッションブランド〈fruits of life〉をスタートし、デザイナーとしても活躍、多忙を極める大橋さんは、今回久しぶりに取れた休暇に、平戸が紡いだ歴史と豊かな自然を堪能する旅へ出た。
平戸の国際化は地理的要因が大きい。北は玄界灘、西は東シナ海に面し、古くから海上交通の要であり、16世紀末から17世紀初めにかけて本格的に貿易港として賑わう。ポルトガル、スペイン、オランダ、イギリスなどから多くの外国人が来航し、町中では複数の外国語が飛び交っていた。そして彼らは世界各地の食べ物や文化も運んできたという。
まずは、平戸の海外交流史を知るため〈平戸オランダ商館〉へ。ここはかつて、平戸に拠点を置いた東インド会社が膨大な交易品を保管するために建てた〈1639年築造倉庫〉を復元した建物で、現在は資料館になっている。当時の貿易資料や航海用具などを展示していて、平戸と海外のつながりがよくわかる。
「展示のキャプションに“松浦”とつく人名がたくさん出てくる。どうやら、平戸の海外交流にはこの松浦家が深く関わっているみたいですね」