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なぜ我々は「ピエロが怖い」と感じるのか…その知られざる理由

『ジョーカー』、『IT』の原点を探る
朝里 樹 プロフィール

古くは「復讐者」として描かれていた

では、ジョーカーやペニー・ワイズ以前に、殺人道化師がいなかったのかといえば、そうではない。

有名なところでは1849年のエドガー・アラン・ポーの小説『跳び蛙』にて、小人症で足に障害があり、腕が異常に発達した「跳び蛙」と呼ばれる宮廷道化師が、王や聖職者といった高い地位の人々から不当な罰を受ける。それを恨んだ跳び蛙は、舞踏会で彼らをシャンデリアに吊し上げ、そのまま火を放って燃やし、復讐を遂げるという物語が記されている。

オペラ『パリアッチ』の上映風景/Photo by gettyimages

またルッジェーロ・レオンカヴァッロが作曲し、1892年に初演されたたオペラ『パリアッチ』(邦題は『道化師』)では、旅芝居の座長であり、道化師を演じるカニオという男が、妻の浮気により心を乱されながら、道化師はどんなに悲しいときにでも客を笑わせなければならないと嘆く。そして始まった芝居の中で次第に現実と芝居の区別がつかなくなり、ついに妻と、彼女を助けようと舞台に上がってきた間男を刺し殺す。そして有名な「この芝居はこれにて終了」というセリフを混乱する観客たちに向かって呟き、オペラは終わる。

 

これらの作品における道化師は、ただ恐ろしいだけの殺人鬼として描かれているわけではない。彼らの殺人には同情できる理由がある。

現在公開中の『ジョーカー』は、どちらかといえばこれら古き殺人道化師たちと同じような、理不尽に対する復讐者としての側面が強く描かれている。ただし彼もまたジョーカーであるため、単なる復讐劇とは異質の狂気の印象を抱かせるが、これ以上は映画のネタバレになってしまうため言及しない。

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