2019.11.24
# 食

老舗蔵元の社長、230年の伝統より守るべき「あえてのこと」

「笛木醤油」12代目笛木吉五郎社長に聞く
夏目 幸明 プロフィール

父の遺したメモで

'17年、当社を継いでくれていた叔父も急逝し、私が社長に就任しました。気をつけたことは「姿勢」です。従業員は社長の言葉を聞くのでなく、背中を見ています。うわべで「地域貢献」「差別化」などと綺麗事を言っても、誰もついてきてくれないと思ったんです。

そこで、社員一人ひとりと向き合うため全員と面談し、考えにしっかり耳を傾けました。同時に青年会議所の理事など、自分自身も地域のために活動をしました。マネジメントは、言葉よりも振る舞いのほうが大切、と思います。

 

社長就任直後は社内に「変わらず醤油をつくっていればいい」といった緩んだ雰囲気もあったんです。しかし私が悩んでいる時、母が「こんなものが出てきたよ」と渡してくれた古いノートが変わるきっかけをくれました。

それは父のメモで、誰に見せるつもりもなかったのでしょう、自分だけにわかる言葉や数字が走り書きしてありました。メモの中に、社員に対する思いが詰まったページがあったんです。

Image by iStock

見れば「一人ひとりに感謝を捧げよう」「なんとか利益を出して社員に還元しよう」などと書き連ねてあります。しかも全従業員に向けて書かれた一枚の手紙が挟んであり、そこには心からの感謝の念が綴られていたのです。

その瞬間、私の心の中に、何かがこみ上げてきました。そして気づいたのです。そうか、私の話を聞いてもらいたいなら、まず私自身が社員への敬意を表すべきだったのか、と―。

私生活では、埼玉県の事業家の先輩に様々、教わっています。今も覚えているのは「吐くことが大切」と言われたことです。何かがあったら思いを吐き出し、出しきってスッキリしたなら、今まで出したものはあなたにとって大切なものではない。出してもまだ自分の内側から湧き出してくるものが一番大切なものなんだよ、と言われました。

あと、やはり醤油や出汁に関するものが好きで、お寿司屋さんの醤油、焼き肉のタレ、何でも嘗めて味わいます。

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