DNA鑑定、どこを鑑定するのか
- そもそもDNAでどうやって鑑定するのだろう?
- 個人を特定するなど、どうしてできるのだろうか?
そのように思われる方も多いのではないだろうか。
しばしば耳にするDNA鑑定という言葉。とくに、犯罪捜査への活用は、DNA鑑定の「華」であり、テレビドラマで科捜研が犯人を追いつめていく姿はじつに頼もしい。とはいえ、DNA鑑定も決して万能ではない。犯罪捜査においても、また然りである。
まずは、DNA鑑定とはどのように鑑定するのか、ご説明しておこう。
DNAとは、生命の設計図であるデオキシリボ核酸(deoxyribonucleic acid)の略語で、ねじれた梯子状の2本の鎖に塩基が並ぶという基本構造はすべての生物に共通である。
核酸は、「塩基(アデニン・Adenine、チミン・Thymine、シトシン・Cytosine、グアニン・Guanine)」の4つの塩基と「糖」「リン酸」からなる物質がつながったもので、その最小単位をヌクレオチドという。

通常、DNAは「ヒストン」とよばれるタンパク質に巻きついており、これを「クロマチン構造」という。細胞核にあるクロマチン構造は細胞分裂の際に集まって、染色体をつくる。DNAには、遺伝情報(ゲノム)が書き込まれた遺伝子がある
ブルーバックス『DNA鑑定』より一部改変
個人識別には、DNAに現れる個体差を利用
DNAは、生物種によって違いがあり、同じ生物種の中ではほとんど同じだが、個体どうしで比べると、ところどころ違いがある。同種内でのこうした違い、いわば個体差を「多型」といいう。
DNA鑑定とはこうした多型を利用して、個体識別のほか、親子鑑定や種の区別を行うものである。
ヒトの個人識別や親子鑑定で用いる塩基配列の多型は、次のような基準で選ばれている。
- 多型が病気に関連するものではないこと
- 多型が世界の多くの集団で示されていること
- 多型が確実に、容易に判定できるものであること
- その多型と同じ塩基配列が(相同配列)はゲノム中に1ヵ所のみであること
多型には、大きく3つのタイプがある。
ひとつは、ある塩基が別の塩基に置き換わっている一塩基多型(Single Nucletide Polymorphism:SNP〈スニップ〉、A)。そして、DNAに多くある一定の塩基配列の繰り返し数の変異(B)。さらにもう一つは、塩基配列に別の塩基が入り込んだり欠失したりするインデル多型(C)。

3つの多型のうち、Bの「繰り返し数の変異」の現れる頻度が最も多い。日本で犯罪捜査に使われている方法も、Bによる鑑定方法である。
では、犯罪捜査における鑑定は、どのように行われているのだろうか?