あなたの思い出の中には、どんな、家族と過ごした“一夜(ひとよ)”があるだろうか。
『凶悪』(13年)、『彼女がその名を知らない鳥たち』(17年)、『狐狼の血』(18年)など、監督デビューからの6年間に、国内外の映画賞で60以上もの受賞を果たし、名だたる俳優たちから、今最も出演を熱望される白石和彌監督の最新作のテーマは“家族”

執拗な暴力から子供たちを守るために愛する夫を殺した母・こはるは、「15年経ったら、必ず戻ってくるから」と三兄妹に言い残し、警察へ出頭する。15年が経過し、成長した子どもたちのもとへ帰ってくる母。家族は再会するが、三兄妹のこはるに対する思いはそれぞれだった……。母がいて、大人になった子どもたちがいて。当たり前のようで当たり前でない、いくつもの“一夜”が過ぎていった。

インタビュー・文/菊地陽子 撮影/岸本絢

「小学6年生の娘が、『コウノドリ』の
大ファンで、助産師を目指しています」(白石)

Photo by Aya Kishimoto

映画の中で、佐藤健さんはフリーライターの次男・雄二を、鈴木亮平さんは電気店勤務の長男・大樹を、そして松岡茉優さんは、スナック勤務の長女・園子を演じた。母・こはる役は田中優子さん。メインキャストの4人が全員、白石組は初めてである。

松岡 監督が最初に、私のことを認識してくださったのはいつですか?    

白石「あまちゃん」(13年)かな?

松岡 そんなに前から! ありがとうございます。確かに、私が『ひとよ』で演じた園子は、今までの作品の中では、「あまちゃん」の役に一番近いかもしれない。 

白石 当然、『勝手にふるえてろ』(17年)とか『万引き家族』(18年)とか、節目の作品は見ています。『コウノドリ』はうちの娘が大好きで、一昨日ぐらいもまた観ていて、「(シリーズの)1なの2なの?」「これ、1だよ」なんて会話をしたばかりで。娘の将来の夢は、助産師さんです。

松岡 (目を輝かせて)それが一番嬉しいんです! 「コウノドリ」に出演してから、「助産師さんになりたいと思いました」とか、「産婦人科医を目指しています」と書いてあるお手紙をいただくんですけど、それが一番嬉しい。「俳優をやっていてよかった〜」と思える瞬間です。もちろん、未来のことだから、お嬢さんの夢が変わっても全然構わないんですけど、自分が心を込めて演じた役に、思い入れを持っていただけたことは本当に幸せです。

白石 それが、娘の場合は、最初の放送(15年の10月クール)から、ずっとその夢が変わっていないんです。今小学校6年生ですが、最後の夏休みの自由研究が、助産師さんについてのレポートだったから(笑)。

松岡 すごいことだなぁ。やっぱり、社会的に意義のあるメッセージが込められた作品に参加させていただくと、そういう効果があるんですよね。俳優冥利につきます。ありがとうございます。

白石 でも、今回は、娘にいいとこ見せようとして起用したわけじゃないですよ!
そこはやっぱり、いろんな作品を通して松岡さんの女優としての力量を感じた上で、ぜひ一緒に仕事をしてみたいと思ったことが第一です。ただ、今回は家族の話だから、佐藤健くん、鈴木亮平くん、松岡さんの3人が、ちゃんとした“兄妹”に見えなきゃいけない。そこも重要なポイントでした。でも、クランクインして最初に、茉優ちゃんと亮平くんとの二人でお墓参りをするシーンを撮ったときに、二人が、本当に子供の頃から一緒に時間を過ごしている兄妹に見えたんです。

松岡さんの年齢と、台本上の園子の年齢も違うし、実年齢では、亮平くんとの年の差もかなりあるんですが、一瞬で、そこの壁を取り去ってくれたから、役者ってすごいものだなぁ、とあらためて思いました。

(C)2019「ひとよ」製作委員会