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すべてを諦めて生きる「N放世代」。韓国の青年たちの過酷な生活に迫る

未婚率が急増、出生率は世界初の「0人台」へ
「超格差社会」の韓国では、厳しい経済状況のため、すべてを諦めて生きる青年たち「N放世代」が社会問題になっている。絶望感から若年層の未婚率が急激に増加、出生率は世界初の「0人台」へ突入した。国の存続まで脅かす未曾有の事態だが、前回に引き続きその実態を、ソウル在住のジャーナリスト・金敬哲氏の近刊『韓国 行き過ぎた資本主義』から紹介する。

すべてを諦めて生きる「N放世代」

韓国の青年世代を指す流行語に、「N放世代」という自嘲的な言葉がある。「すべて」を表す不定数の「N」に、「あきらめる」という韓国語の頭文字である「放」を合成した「N放世代」は、厳しい経済状況のため、すべてをあきらめて生きる世代という意味だ。

 

恋愛、結婚、出産をあきらめる「三放世代」という造語が誕生したのが2011年で、その後、青年失業率の増加と非正規労働者の増加がマスコミで大々的に報じられるようになった2015年頃から、流行語として盛んに使われるようになった。

以降、三放に加えて就職やマイホームもあきらめる「五放世代」、さらに人間関係や夢までもあきらめざるを得ない「七放世代」を経て、今や人生のすべてをあきらめたまま生きる「N放世代」へと進化したのだ。

鷺梁津(ノリャンジン)の考試テルで公務員試験の勉強を続けているパク・ジュンスさんは、早くから恋愛と人間関係をあきらめて勉強にしがみついている

「恋愛にはお金もかかるが、何より時間がもったいないです。睡眠時間は5時間未満、食事時間を削るためにあえて一人飯を選んでいる私に、恋愛に使う時間なんてありません。1年以上、友達と会ったり、酒を飲んだりしていませんし、故郷にいる両親にも3年以上会っていません。

受験勉強を始めてからは、秋夕(日本のお盆のような祝日)やクリスマス、正月など、世の中が休む日は私にとって働く日になりました。バイト代が2倍になるからです。もう30歳だし、いつまでも両親から生活費をもらって勉強するわけにもいきませんが、それでも頑張るしかないです」

教師を夢見て教師任用試験の勉強をしているハ・ヨンウさんは2年前から恋愛中だ。しかし、ハさんが彼女と会える時間はひと月にわずか1時間余りだ。

「月に一度だけ、日曜日のお昼に塾周辺の食堂で、彼女とデートします。日曜日にも(塾の)授業があるので、彼女と昼ごはんを食べたら、すぐに塾へ戻って勉強しなければなりません。

わずか1時間のデートのために遠くから来てくれる彼女にはいつも悪いと思っていますが、むしろ彼女のほうから1ヵ月に一度だけデートすることを提案してくれました。彼女は(私が)試験に合格したらすぐにでも結婚したいと思っているようですが、正直試験に合格したとしても、結婚資金を作るまでにはさらに数年かかりそうです」

中小企業を退職して再び就活戦線に復帰したチョ・ユナさんは、韓国に住むことをあきらめようかと考えているという。

「再び就職準備生に戻って、以前より途方に暮れています。今は大学に行ったことを後悔しています。むしろ専門学校や高卒のほうが就職できたような気がするんです。どうしても就職が難しいようだったら、様子を見てワーキングホリデーに挑戦しようと考えています。ひとまず1年間海外に出て、そこに定住できるようであれば定住したいです」