中国「教授拘束事件」の意味…内外の研究者に及ぶ管理・統制

関係「改善」とともに進む対日強硬策
川島 真 プロフィール

拘束事件と日中関係

中国外交部のスポークスマンは、今回の拘束事件が「改善」されつつある日中関係に与える影響は限定的だ、と述べている。確かに、今回の事件により首脳交流を停止するようなことにはならないだろう。そして今回の事件をきっかけに日中間の教育、研究交流の全てを停止すべきだ、という主張もやや極端にすぎるだろう。

 

しかし、立ち止まって考えなければならない。

習近平体制下の中国は、国際政治の面では現在のアメリカを中心にする秩序の三要素(1.アメリカを中心とする安保体制、2.西側の価値観、3.国連とのその関連組織)のうち、3のみを支持するとし、また国際経済の面ではアメリカを保護主義と批判して、中国こそ「自由で開かれた」経済貿易体制を支持するとしている。

無論、中国の言う「自由で開かれた」と言う言葉の定義は西側のそれとは異なる。だが、中国はこうした秩序観を以て、自らの唱える新型国際関係の実現を目指している。

これを日本に適用すれば、国際政治領域、すなわち日米安保の関わる東シナ海、南シナ海、尖閣諸島問題、台湾をめぐる問題、そして価値観に関わる歴史認識問題などについては、日本に厳しくあたることになる。

他方で、経済面では「自由で開かれた」などといった言葉を標榜して日中間の協力、協働を進めようとする。

日中関係の「改善」とはまさにこのことであり、昨今首脳会談が継続的に行われても、日本周辺の中国人民解放軍の活動は一層活発に、また尖閣諸島周辺の領海や接続水域に入る海警などの公船の数は増加傾向にある。

今回の歴史研究者の拘束事件も、まさにこの国際政治領域での対日強硬政策の一環として理解できる。

現在の日本は「関係改善」を旗頭に、対中関係を穏当に処理しようとするあまり、中国の国際政治領域における対日強硬政策にも穏当に対処するのだろうか。

米中対立の下で、国際経済領域では、中国との一定の協働は必要だろう。また、中国との教育文化交流も不要だとは言えない。

しかし、関係改善基調にあるからと言って、今回の歴史研究者拘束を含む国際政治領域での中国に対日強硬政策に、経済関係の重要性を理由にして、ただ穏便に、友好姿勢だけで対処するのも問題だ。

将来を見据え、一線を譲らぬ覚悟で、是々非々の、厳格な対応をしないといけないだろう。