中国「教授拘束事件」の意味…内外の研究者に及ぶ管理・統制

関係「改善」とともに進む対日強硬策
川島 真 プロフィール

中国における学問・言論の管理統制

中国では、毎年6月4日前後や10月1日の国慶節前後は、言論・思想統制が強まることが知られる。また10月末には4中全会があり、緊張度が高まっていたとも言える。だが、今回の事件は瞬間的な緊張によって生じたものではないだろう。

 

第一に、このような拘束事件が日本人相手だけに起きているわけではない、ということだ。

2018年にカナダの元外交官が、また2019年には中国系オーストラリア人作家が拘束されたように、近年、アメリカ、カナダ、オーストラリアなどの国民が相次いで中国で拘束された。大学の教員が中国で拘束される事例は台湾人にも見られている。

国立大学勤務の歴史研究者という意味では今回の日本のケースは珍しいが、外国人の拘束という意味では日本人だけが対象なのではない。この背景の1つは、中国が国内の外国企業、国際NGO、外国人への管理を強化しているということがある。

第二に、中国国内での思想、言論の管理統制の強化ということがある。

大学の中に限定しても、個々の大学教員の海外での研究報告などがチェックされるだけでなく、授業内容が録画されたり、学生に教員の授業内容がチェックされたりする制度もできている。つまり、「学問の自由」は保証されていない。

ただ、西側諸国と同様の「言論・集会の自由」が担保されていないのは、中国の学術界だけではなく、社会全体のことである。

そうした意味では、第一に挙げた外国人をめぐる管理、統制の強化は、むしろ中国国内の中国人向けの制度が、外国人にも適用されつつあることを意味しよう。研究者についても、国内の研究者に対する監視・管理体制が中国国内に入った外国人にも適用されるようになりつつあるのであろう。

以前、中国国内で出版される書籍や論文について、中国人と外国人は別の基準があったが、習近平期に入って両者の基準はほぼ同じになり、外国人の書いた文章の中国国内での出版は内容によって極めて難しくなった。