田代まさし「覚せい剤で再逮捕」…薬物依存症の治療は失敗だったのか

まだ薬物との闘いに負けたわけではない
原田 隆之 プロフィール

治療は失敗だったか

田代さんは、刑務所を出所後、薬物依存症からの回復を目指す自助グループ「ダルク」の職員として活躍していた。その間、法務省の啓発イベントに登壇したり、NHKのテレビで薬物依存について語ったりしていた。

「日本一有名な薬物依存者です」と自虐的なコメントで笑いを取りつつ、実体験を赤裸々に話す様子は、ユーチューブでも配信され、多くの人々がアクセスしている。その話術はやはり素晴らしく、これだけ才能がある人の立ち直りを多くの人が応援していたのは事実だ。

そして、一転今回の逮捕となったわけだが、それでは彼の受けた治療や活動には効果がなかったのだろうか、意味がなかっただろうか。これですべて振り出しに戻ってしまうのだろうか。

 

答えはノーである。これまでも何度か薬物依存症の治療について記事を書いてきたが、これまでも強調してきたことは、「薬物依存症とは失敗しながら回復していく病気」だということである。

治療につながったから、ダルクに入ったから、それでピタリとやめられる。依存症とはそんな簡単なものではない。もし、それでやめられたのだとしたら、その人はそもそも依存症でなかったのかもしれない。

1度も再使用せずにやめ続けることができればそれに越したことはないが、どんなに理想的な治療環境にあったとしても、完全な断薬に至るまでには、2度や3度の失敗(スリップ、ラプスなどと呼ぶ)はつきものである。これが依存症の現実である。

したがって、われわれ薬物依存症者の治療や支援に携わる者は、最初からラプスを織り込み済みで治療に当たっている。これは何も開き直ってるわけでも、甘やかしているのでもなく、実は、ラプスこそが治療を深める重要な契機になるからだ。