IQよりも将来への影響が大きい…「非認知スキル」とは何か?

発達心理学の最新知見から
森口 佑介 プロフィール

人間は実行機能をどのようにして身につけるか

筆者は、人間はいつ頃から自分をコントロールできるのだろうかという疑問を高校生のときに持ちました。

そのきっかけが、二つあります。一つは、生物としての人間の特徴は何だろうと考えたときに、この能力が有力な候補なのではないかと思ったことです。人間に最も近い生物だとされるチンパンジーですら、自分をコントロールすることは得意ではありません。実行機能は、人間を特徴づける能力の一つではないかと思い、関心を持つようになりました。

また、筆者は、人間はいつ頃この力を身につけるのだろうかと考えました。実行機能が人間の特徴であったとしても、生まれてきたばかりの赤ちゃんにこの能力が備わっているとは思えませんし、赤ちゃんどころか、若者ですらこの能力は十分に発達していないように思われました。

20世紀末に、若者がキレやすいという社会問題がマスコミを賑わしました。 1997年に起きた神戸連続児童殺傷事件をはじめ、未成年者によるさまざまな凶悪犯罪が起き、当時未成年だった筆者たちは、マスコミから「キレる若者」というレッテルを貼られました。キレるということは、誘惑や困難に打ち勝つ力が足りないことを意味します。

実際のところは、マスコミが過剰に騒いだだけであり、直接の因果関係があるかどうかはわかりませんが、この問題から、自分をコントロールする力は、いつ頃、どのように成長するのだろうかという関心を持つようになりました。

大学生のときに発達心理学という学問に出会い、実行機能を研究テーマとして選びました。大学院生になってから本格的に研究を始めて、博士研究員から大学教員として働く現在に至るまで研究を続け、実行機能の成長過程を明らかにしてきました。

その一端を本書でお伝えしたいと思います。ぜひ、読者の方は、これまで身につけてこられた実行機能を発揮して、お付き合いください。