IQよりも将来への影響が大きい…「非認知スキル」とは何か?

発達心理学の最新知見から
森口 佑介 プロフィール

数年前から、わが国においても、非認知スキルが子どもの将来にとって重要だと紹介する書籍やウェブコンテンツが増えてきました。

しかしながら、それらの多くは、子どもの研究をしたこともない方々による、一部の研究成果に基づいた表層的な(時には誤った)知識によって書かれています。

実際のところ、非認知スキルのなかには、 IQなどと異なり、測定することすらできないものも多数含まれています。つまり、非認知スキルが大事だと言ったところで、それは絵にかいたモチであったり、科学的な研究に裏付けられているとは限らなかったりするのです。

そのなかで、本書では、非認知スキルのなかで、結局のところどのスキルが子どもの将来にとって大事なのかという疑問に答えたいと思います。

その答えは、自分をコントロールする力なのです。本書では、この力について見ていきたいと思います。

 

目標を達成する実行機能

目標を達成するために、自分の欲求や考えをコントロールする能力を、「実行機能」と呼びます。心理学や神経科学の専門用語なので聞き慣れぬ言葉かもしれません。

実行機能は、英語で「エグゼクティブ・ファンクション」と言います。エグゼクティブには会社組織における執行取締役という意味がありますが、それに近いイメージを持っていただければと思います。

執行取締役の主な業務は、営業をしたり、製品を作ったり、総務的な仕事をしたりすることではありません。会社の目標を定め、その目標を達成するために、営業、製造、総務などの現場に対して指示を出すことです。

たとえるならば、営業や製造が実働部隊であるのに対して、執行取締役はブレーンだということになります。

目標を達成するためには、さまざまな苦難を乗り越えなくてはいけません。本業に注力するべきときに、妙な投機に手を出す誘惑にかられることがあるかもしれません。そのようなときに、執行取締役がしっかりと機能していれば、誘惑に打ち勝ち、本来の目標を達成することが可能となります。

執行取締役は会社組織における目標を定め、それを達成する役割を担いますが、本書における実行機能は人間個人が持つ能力です。自分自身で目標を定め、その目標を達成するための能力になります。

実行機能は、自制心という言葉の意味に近く、こちらのほうが身近かもしれません。自制心は自分をコントロールすることに主眼を置いていますが、実行機能は目標を達成することに主眼が置かれます。本書では、この点を強調したいので、実行機能という言葉を使います。