食のスペシャリスト&グルメに精通する識者で構成される「FRaU Foodies」が、今イチオシの料理やスイーツなどをお届けします。今回は、これまでに5000個以上のパンを食べたという、パンコーディネーター兼モデルのパン野ゆりさんイチオシのフォカッチャです。

海外を飛び回るシェフによる
ボーダレス料理店のフォカッチャ

国内外含めて約1000軒のパン屋を訪問。食べた数は5000個以上というパンLOVERのパン野さん。本来は“山野ゆり”としてモデル活動をしていますが、パンに関わると“パン野ゆり”に名前を変えるほどパン愛溢れるパン野さん。大好きなパンのひとつが「フォカッチャ」だと言います。

「本場のイタリアでは、一般的に昼食やおやつ、アペリティーボ(アペロ)に食べられているそうです。クリスピーピザのように平べったくカリッとした食感のイメージが強く、トマトソースやバジルなどのトッピングを施していて、ピザと見栄えが変わらないものも多いんです。

日本で私がフォカッチャを食べるタイミングは圧倒的に夜! なんでだろう? と考えたところ……日本のフォカッチャは生地が厚いからだ! という答えに辿り着きました(笑)。厚みのあるフォカッチャは様々なお料理に合い、ご飯やパスタの代わりに主食として楽しめます」。

フォカッチャについて熱弁するパン野さんのイチオシがあるのは、九段下の「Olive Oil(オリーブオイル)」。

2019年1月にオープンしたお店で、オーナーシェフの蓮見勝利さんが巡ってきた国の料理のエッセンスと、自身が経験してきたイタリアンを基軸にユニークな多国籍料理がいただけます。

フォカッチャは、ランチはセットの一品、ディナーはサービスのお通しとして提供されます。

フォカッチャ  1人1切れお通しで提供。追加は1切れ¥100

「コクがありながらもマイルドな味わい! まるでチーズのようなコクがあります。秘密は生クリーム!?」というパン野さん。これが正解。生クリームを多めに入れているのが特徴。それにより、しっとりと仕上がっています。ほかに牛乳とバターが入り、至極シンプル。

側面はカリッとしつつ、中はふんわりしっとり。従来のサクッとしたフォカッチャの歯応えとは一線を画します。

フォカッチャは1日に2回焼く。この1枚で28人前分あるそう

「厚めのカットがうれしい! 食感はふっくらしていて、今流行りの高級食パンに近いです。でも、食パンのような“甘さ”ではなく“塩っぱさ”が料理に合う秘訣。料理が出てくる前にフォカッチャだけでペロリと食べきってしまうほどお気に入りです」。

ついフォカッチャを食べきってしまうパン野さんですが「料理のソースをぐんぐん吸い込んでくれます」とも言っていて、これはもうおかわりしていることは間違いありません。

ということで、取材時にフォカッチャに合う料理を2品、蓮見さんが出してくださいました。

カリフラワーグラタン ¥1200

まずは「カリフラワーグラタン」。本来使われるベシャメルソースは不使用。卵、生クリーム、パルミジャーノチーズの生地を流し込み、グリュイエールチーズをのせて焼き上げます。ふつふつと湯気が立ち上る中、トリュフの香りがふわ〜っと漂ってきて、食欲がそそられます。

周りはカリッとしていますが、中は卵を使っているからスフレのようにふわっと柔らか。そのコントラストがたまりません。隠し味にフェンネルシードが入っていて風味豊か。この絶妙なスパイス使いがユニークな多国籍料理たる所以。
料理の主役はもちろん、カリフラワー。大きくカットし、程よく食感を残しているからホックホク。寒くなってきた今こそ、食べたくなる逸品です。

そんなスパイスを使った料理に合うようにと、南アフリカのグラスワインを用意(750円と850円)。その相性の良さに料理とワインが進むこと必至です。他にも、ボトルは3000円〜赤・白10本ずつとロゼ・スパークリングもあります。

ゴルゴンゾーラチーズといちじくのファルファッレ ¥1500

もう1品は「ゴルゴンゾーラチーズといちじくのファルファッレ」。蝶ネクタイのような形をしたパスタ・ファルファッレは、お店で手打ち。もっちりとした食感がクセになります。

パスタのくぼみに絡むゴルゴンゾーラのソースは馥郁で濃厚。それに負けないいちじくの甘みが、ソースの苦味を引き立て、ゆっくり炒めた玉ねぎの香りが最後に鼻から抜けて余韻を残します。

「Olive Oil」の料理は、その国の土着を大切にし、素材を活かして必要以上の味付けをしないシンプルな味が特長。だからこそ、フォカッチャそのままでも料理と一緒に食べても美味しくいただけます。こうやって、パン野さんもフォカッチャを2度楽しんでいるのでしょう。

料理はすべてアラカルトで提供。黒板のメニュー横に書かれている3つの星がオススメの証しです。前菜、パスタ、メインに星がついているので、その通りに食べれば、「Olive Oil」を堪能できます。

ジャンバラヤ ¥1800

そのおすすめのひとつが「ジャンバラヤ」。アメリカ南部ニューオリンズ州の名物料理です。

蓮見さんは「アメリカ南部の文化は、アメリカの先住民とアフリカから連れてこられた人々、ヨーロッパからの入植者、近隣のラテンアメリカが混ざりあっています。ジャンバラヤもその混ざりあった文化から生まれました。こういう背景を料理を通して知り、考えて勉強しながら試行錯誤してお店の一品として提供しています」と言います。

このように現地で体験してきたことを注ぎ込む蓮見さんの料理、パン野さんおすすめのフォカッチャからはじまる“食の旅”にどっぷりとお楽しみください。

Olive Oil(オリーブオイル)
東京都千代田区九段北1-8-2
☎03-6882-3460
営業時間:11:30~14:00LO、18:00~2200、
定休日:日・祝

PROFILE

パン野ゆり Yuri Panno
パンコーディネーター、パンシェルジュ。日本全国のベーカリーを訪れ、年に数回は海外にも足を運び、パンを独自の視点で分析している。トークショーやラジオに出演する他、テキスタイルブランド「gochisou」と東日本橋の『BEAVER BREAD』とのコラボレーショングッズを発売。活躍の場を広げている。モデル・山野ゆりとして、雑誌や広告、CMなどに出演。モデルの職業を活かした、太らないパンとの付き合い方も考案している。

Photo:Tatsuya Hamamura Illustration:YUGO. Composition:Seiki Ebisu