中国龍王がオオカミと戦い化石を発見! 神秘のチベット恐竜物語

好評「恐竜大陸をゆく」西蔵編
安田 峰俊 プロフィール
チャンドゥサウルス(西蔵自然科学博物館HPより)

この博物館は2010年から工事が始まり、2014年に開館した施設である。統治体制が弛緩していた胡錦濤時代の中国に多かったハコモノ行政の産物だ。

西蔵自然科学博物館西蔵自然科学博物館(www.tibet.cnより)

おそらく、チベットの主要都市の名前を冠した数少ない地元の恐竜だということで、怪しさを承知でチャンドゥサウルスに復元骨格展示の白羽の矢が立ったのだろう。

ほか、チベット自治区南西部のシガツェ市ニャラム県からは、三畳紀後期の魚竜であるヒマラヤサウルス・チベテンシス(Himalayasaurus tibetensis:喜馬拉雅魚龍)が見つかっている。ちなみに、発掘地であるニャラム県はネパール国境の街で、区都のラサよりもネパールのカトマンドゥのほうが近い。県内には標高8000メートル級の高山がそびえ立っている。

そんな場所で発掘されたヒマラヤサウルスは、なんと文化大革命中である1972年に報告された中国古生物界の古参……なのだが、こちらも研究が進んでおらず種名も疑問名とされている。ただ、西蔵自然科学博物館にはこのヒマラヤサウルスに関係した展示もあるようだ。

豪快研究者、チベットオオカミに勝利する

チベットで発見された恐竜や中生代古生物の多くは情報量が乏しい。むしろ面白いのは、モンコノサウルスやチャンドゥサウルスを発見した古生物学者・趙喜進だ。彼は1935年生まれで1950年代にモスクワ大学に国費留学したという経歴を持つ、中国科学院古脊椎動物・古人類研究所教授だった人物である。

中国の科学ニュースサイト「神秘的地球」2009年3月2日付記事によると、モンコノサウルスが発見されるすこし前、趙喜進は心臓病の手術を受けていた。家族はそんな身体で標高4000メートルのチベットへ発掘に行くことに大反対だったそうだが(しかもモンコノサウルスが見つかったのは厳寒期の1月だ)、それを押し切って出発したらしい。