中国龍王がオオカミと戦い化石を発見! 神秘のチベット恐竜物語

好評「恐竜大陸をゆく」西蔵編
安田 峰俊 プロフィール

出土した年代も当初は白亜紀前期と見られていたが、董枝明はジュラ紀後期に修正している。

種としては認めづらいかも……

モンコノサウルスは体長5メートルほどだったようだ。中国全体でも比較的初期に見つかった恐竜で、しかもチベットで最初に見つかった剣竜であることもあってか、中国の剣竜を扱った論文ではたまに名前が登場する。

ただ、モンコノサウルスは出土した化石が断片的であるうえ、多くは骨が砕けた形で見つかるなど状態もよくなかった。

 

2008年にイギリスのスザンナ・メイドメント(Maidment, Susannah C.R)と中国の魏光飆(Wei Guangbiao)が発表した、中国で報告された剣竜7種類について検討をおこなった論文は、現状の化石標本について「種として認めるに足るほどの特徴を観察しづらい」と指摘。モンコノサウルスは疑問名(=正式な学名とは認められない)であると主張している。

ちなみにこのスザンナ・魏論文で学名が有効だとみなされた中国の剣竜は、名前が上がった7種のうちでトゥオジャンゴサウルス(Tuojiangosaurus:沱江龍)とチュンキンゴサウルス(Chungkingosaurus:重慶龍)、ギガントスピノサウルス(Gigantspinosaurus:巨刺龍)の3種だけだった。

四川省とチベットをつなぐ環境

モンコノサウルスが種として認められるかは怪しいところだが、この化石が剣竜であることはおそらく間違いない。トゥオジャンゴサウルスやチュンキンゴサウルスなどの他の中国の剣竜たちも、多くはチベット高原に比較的近い四川盆地で化石が見つかっている。

トゥオジャンゴサウルス Photo by Getty Images

ジュラ紀後期から白亜紀前期にかけての四川省からチベットにかけての一帯は、剣竜が繁栄しやすい土地だったか──。もしくは、化石が残りやすいような環境で暮らす剣竜が多く住んでいた土地だったのだろう。

事実、チベットで見つかったとされる、もう1種類の恐竜化石も剣竜のものである。その名はチャンドゥサウルス(Changdusaurus:昌都龍)。モンコノサウルスが見つかったのと同じチャムド市の漢字名である「昌都」が、そのまま名前になっている。

もっともこのチャンドゥサウルスは、モンコノサウルス以上に謎が多い。1983年にやはり趙喜進の論文で言及された剣竜の仲間……なのだが、その後の研究はまったくなされていない。

正確な地質年代も推定体長もすべて不明、化石標本の現在の所在すら明らかではないという、かなり怪しげな恐竜だ。

当然ながら「チャンドゥサウルス」という名前も疑問名で、正確な学名ではない。

ハコモノで会える謎恐竜と謎魚竜

もっとも、チャンドゥサウルスは近年になりなぜか脚光を浴びるようになっている。区都ラサにある西蔵自然科学博物館に、なんと全身の復元骨格(どういう根拠をもとに復元したのだろう?)が展示されているのだ。