ボードゲーム「カタン」がスマホARになって数学者の僕が考えたこと

第2のIngress?
安東 雅訓 プロフィール

皆が皆「効率的」ではない

僕がカタンに出会ったのは大学院生時代の研究室でのことで、もう10数年前のこととなる。学科の後輩で将棋部だった岸本君の布教だったかと記憶している。同じ学科でも研究室ごとに特色のようなものがあり、一言も会話せずただ黙々と数学をするような部屋もあれば、専門書よりも漫画やゲームの方が多い遊び部屋もあった。

1995年発売当初のカタン photo by gettyimates
 

僕のいた部屋は話の流れ的に後者の方で、当時3人以上人がいるとカタンが始まってしまうので研究にならなかった。かと言って家にいても、「メンバー足りないんだけど」とお誘いがかかってくる。アカデミックな職に就いている当時の研究室メンバーで集まることがあると必ず、あの部屋でよく就職できたものだ、という話題になる。

人によってプレイスタイルが違うことも面白く、同じように数学を専門としていても、皆が効率的なプレイをするとは限らない。例えば同じ研究室にいたモンゴルからの留学生は、羊タイルが固まれば数字が悪かろうが無条件に飛び込んでいき※1、それでも不思議と1位争いに絡んできていた。「日本人は知らないだろうけど、羊があれば衣食住全部まかなえるんだ」という彼の言葉は忘れられない。

※1 カタンでは土地に2~12の番号が付いていて、サイコロを2つ振って出た目の和がその土地の番号であれば資源が手に入る。2と12が出る確率は1/36、6と8が出る確率は5/36、単純に言って土地の価値が5倍違うことになる。また、7が出る確率が1/6と最も高いが、7の番号の土地はない。