社会という荒野を仲間と生きろ

宮台 僕は「社会という荒野を仲間と生きろ」っていう処方箋を定期的に出してて、そういうタイトルの本もあるんですが、これから社会はますます劣化していきます。どんどん荒野になって、ペンペン草も生えない荒れ野になります。そのなかでオアシスを保とうとすると、それはかなり強い意志や、仲間意識が必要なんですね。親が荒野化にあらがう意志をもつのであれば、男子校のアドバンテージが回復する可能性がある。

日本中が感動したラグビーワールドカップ。ラグビー日本代表の「仲間意識」「強い意志」「ハプニングがあったときの対応」は素晴らしかった Photo by Getty Images

―親が男子校の本質を理解できるか。

宮台 親たちが肝心ですよ。希望としては、僕もいろんなところでお母さん向けの講演するんだけど、昔より明らかに話が通じやすくなってるんですね。

―そうですか!

宮台 「もしお母さんたちが、高校生女子だったとして、あなたのお子さんをカレシにしたいと思いますか?」って聞くんですね。そうすると1996年くらいの段階で、「無理です」「キモすぎます」って(笑)。「何でキモい男を育ててるんだよ、この野郎」っていう話なんですけど、それは母親に言わせると「まわりがそうなので、自分だけあらがう勇気がありません」みたいな。そういう言い方をする。でもいまはキモさの閾値を超えたんだと思うんですよ。

―キモさの閾値って……。

宮台 中高生って本来、枠の外に出て経験値を上げる時期なんです。でもいま勉強時間を減らしても、ゲームの時間が増えるんですよ。結局経験値は増やせない。それを見ていると、やっぱり劣化した親でさえ、自分の子がつまらないヘタレになっていくことへの危機感を募らせているのだと思います。

―潮目が変わってきたっていうことですね。

宮台 変わってきたってことだよね。システムのバックアップがないと生きられないからシステムにしがみつこうっていう、これがヘタレなんですね。このヘタレであることは必ず自覚されるので、駄目意識がある。地位エリートであっても駄目意識がある。現在のエリート官僚たちのくずぶりっていうのは、それで説明できるんですよ。

―ちょうど先日映画の『新聞記者』を見ましたけど、見ながら「早くシステムの外に出ちゃえばいいのに」って思っちゃいました。

宮台 そのとおりです。でも、枠の外に出たことがない人間は免疫がないので。

―しかもそういうひとは、自分の子どももその枠の中で何とかいちばんいいレベルに乗っけようとするから、もうあらゆるものを犠牲にして、地位エリートのゲームに突っ込んでしまう。

宮台 劣化した親が、劣化の拡大再生産を行うんです。それがいま、日本で急速で進んでいることです。

PROFILE
宮台真司:1959年宮城県生まれ。麻布高校卒業。社会学者。映画批評家。首都大学東京教授。公共政策プラットフォーム研究評議員。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。社会学博士。『社会という荒野を生きる。』(KKベストセラーズ)、『日本の難点』(幻冬舎)など著書多数。
 

新・男子校という選択』共学化が進む中、「男子校」を選ぶメリットは何か? 麻布、慶應義塾、駒場東邦、筑波大付属駒場のみならず、多くの男子校の現場職員や出身有名人にも取材を行いまとめた一冊。中学受験とは何か、親の立ち位置は何かということも見えてくる。