私が文化庁の委員を辞めた理由

あいトリ「補助金不交付」の問題点
鷲田 めるろ プロフィール

不自然な文化庁の動向

トリエンナーレの一般公開(8月1日)に先立ち、7月31日に関係者向けのレセプションを行なったが、その中で文化庁からの挨拶も予定されていた。ところが、当日、急遽文化庁関係者の出席がキャンセルされた。

当日の朝、朝日新聞等で、《平和の少女像》が展示されることが報道されたことを受けての判断と思われる。レセプションに出席することで、《平和の少女像》の展示を追認したように捉えられることを回避するためであろう。

 

こうした経緯の延長線上で行われた不交付決定に関する文化庁の説明は到底納得できるものではなく、そのような組織の中で仕事を続けることはできないと考えた。

芸術祭や展覧会が政府からの補助金を受けることは多い。補助金を申請し採択されれば、キュレーターは補助金分を含めた予算を作成し、その中から作品の輸送費や設営費、作家の旅費など必要な経費を支払う。展覧会が最大限の効果を発揮できるように予算は目一杯使うケースがほとんどだ。通常は、展覧会が開幕する時点で作品を返却する輸送費も会場の撤去費も入札を経て契約済みである。

ところが政府の意向に反する作品を展示することで、採択済みの補助金が事後的に不交付とされてしまうならば、そのような可能性が少しでもある作品をキュレーターは注意深く排除しなくてはならなくなってしまう。

その結果、美術館や芸術祭で展示される作品は政府の意向に沿ったものだけになり、訪れた鑑賞者は、幅広い様々な作品に触れる機会を奪われる。これは、美術館が本来持つべき、多様な表現に触れる場所という機能を果たせなくなることを意味しており、そのことによる社会全体にとっての損失は大きい