だが『VERY』だけでなく、震災後に路線を転換した雑誌は他にもある。例えば、男性誌『ブルータス』の建築特集から生まれた『カーサブルータス』などがそうだ。

2000年の創刊当時は毎号、安藤忠雄やル・コルビュジエといった有名建築家やその作品の特集が目白押しであったが、震災以降は「美しい収納術」(2011年6月号)、「理想の暮らしが買える店」(2011年7月号)、「やっぱり、動物と暮らしたい!」(2011年8月号)、「おいしいパン、理想のパン屋。」(2011年12月号)など、今までの『カーサブルータス』ではほとんど取り上げられることのなかった身近な暮らしがテーマとして浮上してくる。

『カーサブルータス』の主要読者である男性もまた、『VERY』読者と同じように、ラグジュアリーなファッションとしての建築を楽しむ路線から「美しい暮らしをデザインする」方向へと意識が変化したのだ。

このように、震災をターニングポイントとして、人々はファッションよりもライフスタイルを充実させることにエネルギーを注ぐようになった。震災という出来事を経て、自分の欲望のおもむくままに生きるのではなく、地球環境に配慮し、自らの健康に配慮し、ていねいに暮らすべきだという意識がいっそう高まりを見せるようになったのだ。

うわべだけのラグジュアリー、物質的な豊かさだけを追求しても、「本当の豊かさ」を手にすることはできない。そこで人々は、「本当の豊かさ」を求めて、「ていねいなくらし」に勤しむようになった。