『FRaU Running 走る女は美しい』――2008年、『FRaU』特集から発展した一冊の本が出版されたのだ。有森裕子や高橋尚子といった「スポーツ・ヒロイン」の登場でマラソンへの関心はすでに高まっており、いよいよ本格的に一般の女性たちも「走ること」に参入する時代が到来したのである。

『FRaU』は女性たちを焚きつけた。「気になるカラダも人生もきっと変わる!」「セレブもモデルも今みんなが走り始めている」「シューズ一足で、人生だって変わっちゃう!」……同じ努力をするならば、不毛な女磨きよりも人生を変えるランニング。運動とは運を動かすことなのだ。なるほど、走ることで開運するならば、すべてが上手く回り出すならば、もう走るしかないではないか。

ついに、女性たちは走り出した。「走る女」であることを売りにするタレントも現れた。代表格なのが、野菜ソムリエの資格を芸能界で初めて取得した長谷川理恵である。彼女はいち早く「走ること」を実践し、「美・ジョガー」として『FRaU』の誌面を何度も飾っている。

「肩甲骨がくっきり浮き出た背中」「肩から二の腕にかけてのキリリとしたライン」「しっかりと大地を捉える強さと意志を感じさせる脚」――それは、「愛と熱血の紀香バディ!」とは異なった新たな「美」を女性たちに示すこととなった。現在の筋肉ボディへとつながる鍛えられた身体が持つ美しさが評価され始めたのだ。

新たな流行「エフォートレス」に合う、鍛えられたカラダ

鍛える女は美しい――長谷川理恵らの活躍もあって、健康的で強さと意志を感じさせる鍛えられたボディは、しだいに女性たちの羨望の的となっていった。

ただ細いだけでは健康的ではない。ダイエットやエステや美容医療でつくりあげる人工的なボディはもう、過去のものになろうとしていた。過剰な女らしさを感じさせる「紀香バディ」はファッショントレンドにも馴染まなくなっていった。

2010年代に主流となった、抜け感を感じさせる自然体でエフォートレスな、身体に心地よいコンフォートなファッション。流行りのスニーカーやゆるいコーデに似合うのは、ヘルシーに鍛えられたボディである。もう、ラグジュアリーなブランドバッグやゴージャスなアクセサリーはいらない。それよりも、割れた腹筋、意志を感じさせる脚が輝きを放つ。こうして、筋肉こそ、最高のアクセサリーの時代がやってきたのである。