築地の「カラスの餌」が豊洲で「希少部位」に! 驚きのマグロ消費史

「中落ち」にみる水産業復活のヒント
川本 大吾 プロフィール

その後は、日増しに高まる資源保護論やリーマンショックなどを背景に、マグロをはじめとした魚介類の消費低迷の流れは収まらず、ついに日本も今から10年ほど前、国民1人当たりの魚消費量が肉に追い抜かれるという「魚離れ」が決定的になった。マグロ業界も窮地に立たされる中、皮肉にも世界的には、和食ブームに乗っかって魚消費はうなぎ登りとなった。

 

国内で回転寿司は人気だが、ノルウェーサーモンの人気上昇もあって、「ハレの日にマグロ」という神話もどこへやら。簡単に振り返れば、こうしてマグロ人気は頂点から墜落し、流通にも大きな影を落とすようになったわけだ。

ノルウェーのサーモン加工場 Photo by Getty Images
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この十数年で、マグロの浮いた話といえば、「築地・豊洲」の初競りで、青森県大間産の本マグロに1億5000万円とか、3憶5000万円とか超高値が付いたことくらい。

初競り2019年の「初競り」で落札された本マグロ Photo by Getty Images
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養殖マグロも台頭し、天然・国産本マグロといえど、必ずしも魚市場の主役ではなくなった。

希少部位へ昇格の軌跡

こうしたマグロをめぐる事情から、かつては「副産物」「端材」とも呼ばれてきた部位は次第に「希少部位」へと大きく格上げされることに。築地でも移転までの10年ほどで、ずいぶん希少部位の認知度が高まり、仲卸でも多くの店先に置かれるようになっていった。

マグロの希少部位は、種類が豊富。たとえば頭部なら、頭が良くなると言われるDHA(ドコサヘキサエン酸)や血液をさらさらにするEPA(エイコサペンタエン酸)たっぷりの目玉や「目の裏」と呼ばれるゼラチン質をはじめ、脳天やその下の鉢ノ子、ホホやアゴ、カマトロ、ノド裏なんて部位も食べられる。

希少部位が取れるため豊洲市場で重宝されるようになったマグロの頭
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頭以外ならヒレや尾の身も十分おいしい。このほか、マグロの皮だって食べられる。

千葉県浦安市にある鮮魚店「泉銀」の店主で、魚にまつわる曲を披露する音楽活動も行っている森田釣竿さん(芸名・45)は、以前からマグロの希少部位にこだわった商売をしてきた。「マグロを余すことなくいただこう!」をコンセプトに、店頭にはさまざまな部位が並べられている。