(本記事の写真、クレジットないものはすべて筆者撮影)

築地の「カラスの餌」が豊洲で「希少部位」に! 驚きのマグロ消費史

「中落ち」にみる水産業復活のヒント
トロや赤身だけでなく、中落ち、脳天、アゴ肉などはいかが──。

東京・JR中野駅から少し離れた飲食街に出現したおしゃれな若者向けの店「マグロマート」は、本マグロの希少部位専門の料理店。2019年7月のオープン以来、若者を中心に大人気で、なかなか予約が取れないほどの盛況ぶり。開店の午後5時を過ぎると、店内はあっという間に人で埋め尽くされてしまう。「希少部位」をめぐる流通の事情を、時事通信水産部長が深掘りする。

人気の希少部位をSNSで披露

ガラス張りの大きな窓を店外から見ると、明らかに女性客が多いことに気付く。テーブルには、マグロの刺し身が目立つが、中には真っ赤なマグロの身が、骨付きで皿の上に乗っている。その身をスプーンで削って楽しそうに食べるカップルや女子たち。スマートホンで撮影し、さっそくSNSにアップしながら楽しむ姿が散見される。

テーブル上にある骨付きのメニューの正体は「本マグロ中落ち」だ。

 

じつはこの店、魚の料理屋(居酒屋)としては珍しく、料理のほとんどがマグロの希少部位。中落ちをしのぐ人気メニュー「マグロマート盛り」は、脳天やアゴ肉、ホホ肉などが分厚くカットされ、まな板のような木の皿に乗せられ、客席に運ばれていく。

東京都中野区のマグロ料理店「マグロマート」で一番人気の「マグロマート盛り」
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中落ちの仕入れはゆっくり豊洲へ

東京・築地市場(中央区)から移転して1年を経過した江東区の豊洲市場へ、マグロマートのオーナーである平島瑠尉さん(36)は毎日のように、材料を仕入れに行く。豊洲へ行くというから、さぞかし早い時間かと思いきや、午前10時ごろに顔を出すのだとか。重役出勤なのか?

仲卸店も店じまいの時間が近付くころではないか、と平島さんに問いかけると「トロなんかを仕入れるわけじゃないので、あまり早くても……」といった具合。なるほど、そうか、言葉は悪いが「余りモノ・売れ残り」を集めに行くということか。

中落ちなど、マグロの希少部位について数十年のキャリアがある仲買人に聞くと、「ひと昔前までは、ほとんどが廃棄物だった。中骨にはたくさん身が付いているから、削り集めて従業員らで食べることはあったが、ほかは捨てていたことが多かった」。

生マグロの卸売場(旧築地市場)
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たしかに築地市場では、仲卸店の端の方にマグロの頭や尾がまとめてタルに入れられており、粗末に扱われていた。