アリババの強さの秘密、その独自のビジネスモデルを分析する

孤高の中国ITはこうして生まれた
野口 悠紀雄 プロフィール

中国では原始的な取引しかできなかった

ただし、これだけで成長できるほど事態は簡単ではない。売り手と買い手が結びついても、簡単には取引ができなかったのだ。

2000年代の初め頃の中国には、安心して取引ができる社会的な仕組みがなかったからだ。銀行の当座預金口座はなく、クレジットカードはごく限られた人々が持っているだけだった。このため、初期のタオバオの取引は、同じ都市内での、オフラインの小規模な取引に限定されていた。

 

買い手と売り手はオンラインで互いを知った後、直接に会い、品物を確認し、そして代金と交換していた。こうした取引は、時間とコストがかかり、著しく非効率だ。それだけでなく、詐欺やごまかしが多かったのだ。

ミン・ゾン『アリババ』(文藝春秋、2019年)によると、「売り手が、買い手と待ち合わせをした約束の場所に商品を持参したところ、自転車でひったくられた」というようなことがいくらもあったそうだ。

このように物理的に品物と代金を交換するというのでは、成長の可能性は限定される。取引はローカルなものでしかありえず、中国全土にわたる取引を実現することはできない。

そこで導入されたのが、エスクローという仕組みだ。そして、これが後に、アリペイを作っていくことになる。これについて、次回に述べることとしよう。