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中国の人民銀行デジタル通貨発行、その背後にある「脅威の大戦略」

仮想通貨どころでない衝撃

「リブラ」は通貨ではない

この分野の話は相変わらず誤解が多い。フェイスブック(Facebook)の「リブラ(Libra)」の問題もそうである。

ザッカーバーグCEOが発行延期を余儀なくされたとき「このままでは中国に敗北する」と捨て台詞を吐いたことから、人民銀行のデジタル通貨はリブラと同質のものと誤解を受ける事態まで起きている。この錯綜した情報を整理して、国際金融にとって真の衝撃を解説したい。

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本来であれば、現在では、日本でも(法的に)、「仮想通貨」(Virtual Currency:詳しくは、弊書「通貨経済学入門(第2版)」日本経済新聞社、参照)は「暗号資産(Crypto Asset)」と呼ばなければならない(マスコミ同様、便宜的にここでは「仮想通貨」という名称を使う)。

その方がその本質で、誤解がないからである。ブロックチェーンなどを使い、電子的に譲渡可能だが、公的な裏付けのない「仮想通貨」は通貨ではなく「資産」なのである。通貨や、金融商品ではないので、銀行などの金融機関などは取り扱わない。当然、金融商品販売法の適用外になる。

資産である「仮想通貨」は決済にも使えるが、取引をする人の95%は投資(投機)目的である。資産価格の変動が魅力なのである。マクロ的に見ても、ほかの金融商品の価格の上昇に限界が見えてきて、資産を持っている投資家がこの「仮想通貨」に資金を投入してブームになったのである。

 

フェイスブックが発行する「リブラ」の場合は、その変動制が制限されている。ドルに固定する、いわゆる「ステーブルコイン(Stable Coin)」である。その点で「仮想通貨」としての魅力は減っている。

しかも、発行は民間会社フェイスブックであるため、電子マネーに近い「企業通貨」(詳しくは弊書「決済インフラ入門[2020年版]」東洋経済新報社、参照)である。

日本で近いものをいえば、楽天コイン(企業ポイントは楽天スーパーポイント)、Tマネー(同、Tポイント)、ANA Sky コイン(同、ANAマイレージ)のようなものである。

そもそも、純粋な「仮想通貨」でも、デジタル通貨でもない。法律的に見れば、G20 諸国もあたりまえであるが、裏打ち資産があるといっても、NOと言わざるを得ない。