「北朝鮮=飢餓の国」という図式を疑うべきこれだけの理由

稲刈り真っ只中の農村を回ってみたら
伊藤 孝司 プロフィール

祝日の平壌の街

労働党創建記念日の10日の朝、平壌(ピョンヤン)市内中心部の万寿台(マンスデ)の丘に建つ金日成(キム・イルソン)主席と金正日(キム・ジョンイル)総書記の銅像の前を車で通った。

予想したようにたくさんの人が訪れていて、献花するための花束を販売する出店が並んでいた。

2年ほど前から、地方都市も含め、屋外の最高指導者の銅像や肖像画の前を通過する車は徐行するようになった。こちらとしては撮影しやすくて結構なのだが、「撮るのならば、きちんと撮るように」と案内員からいつも注意される。

新しく建設されたりリニューアルされたりした博物館での展示には、主席と総書記、施設によっては金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の写真が多用されるようになった。その結果、撮影申請をしても許可が出なくなった(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/66512)。

 

今回、「朝鮮革命博物館」に取材申請し、カメラを持ち込むことはできたものの1枚も撮影が認められなかった。初めてのことである。

ちなみに、施設内に展示されたり労働党機関紙「労働新聞」などに掲載されたりしている金正恩委員長の写真は、かなりの広角レンズで撮影したものが多い。レンズは広角になるほど背後の状況を多く見せることができ、手前から遠景までにピントを合わせることも可能。そして何よりも遠近感が強調されるため、思い切り人物に近づいて撮ると力強い写真になる。

北朝鮮での取材先は、私が日本からリクエストした場所ばかりである。取材の意図を汲んで用意してくれることはあまりない。ところが今回は、希望を出していなかった「錦繍山(クムスサン)太陽宮殿」へ行くことが決まっていた。

ここは、主席と総書記の遺体が安置されている、この国でもっとも重要な場所だ。木曜日と日曜日には外国人にも公開され、ちょうど祝日と重なったためセッティングされたのだろう。

宮殿には午前9時前に到着した。約150人の外国人は正装しているが、中国人の団体観光客はラフな服装だった。

ハンカチ以外は持ち込めないので、私はクロークにカメラバッグを預け、長い動く歩道を乗り継いで中へ入る。2人の最高指導者の遺体は、荘厳な音楽が流れる2階と3階のホールに安置されている。

およそ1時間後に前庭に出る。ここでは自分の記念写真を撮ることだけが認められており、ビデオ撮影はできない。私は大きな一眼レフカメラを持ち、動き回って撮影していたために注意を受けた。