いままで使っていなかった身体の能力を使う

そうして、山田さんは自身の「圧倒的なプラス」をみつけた。

「ぼく、右手と両足がないけど、左手があるんですよ。右手があるときに左手ってあんまり使ってあげなかったんですよ。『こいつ使ってあげればいいじゃん』と、左手の能力に気づくことができたんですよ。それに、今こうして話せているじゃないですか。何かを聞けるんですよ。見られるんですよ。“自分ができることの数”に敏感になったんです。

そうなったときに気づくんです。乙武さんってすげえなって。ぼくは人と比べるのは好きじゃないけど、その人の目線になることはあって。目のない方も話せない方もいるし、いろんな障害があるわけです。でもその人たちもやっぱり障害ありながら、自分の持っている能力を引き出して生きているわけじゃないですか。右手と両足がなくなっても、他の人より勝ってるぜっという感じに生きていきたいと。乙武さんはまさにそうやって生きてきた。自分の持っている身体の能力を思う存分使って、人に負けないくらいで生きてきた。

自分が乙武さんと同じようになれるのかとかいろんなことを考えましたね。この人、もともと手がないのに学校の先生やっちゃたんだよな。すげえな。どうやってチョーク使うんだ? おれ手があるんだから書けるじゃん! パソコン打てるじゃん! って。

両手両足ある時には、ぼくは料理もやらなかったし洗濯もしなかったし掃除もしなかったし、親に偉そうにやらせて何かあったら文句言っていたんです。でも親があるから今があることにも気づけたし。将来子どもができたときに誇らしく子どもに接することができると思う。こういう気づきがあったことが圧倒的なプラスだなと思うんです」

-AD-

山田さんは現在、就職活動を行って株式会社JALエアテックに勤務。プライベートではアイスランドのOSSUR社の義足モデルをつとめるなど、活動の枠をひろげている。インスタグラムは頻繁に更新。多くは、友人の結婚式に出ている姿、料理や掃除をしているところ。そこにあるのは「普通の生活」だ。

片手でこんなかぼちゃも調理する。結果は果たして… 山田さんインスタグラム(chi_kun0922)より

「勝手な使命感かもしれないんですが、なにか意味があるから命があると思っているんです。電車に轢かれるという事故に遭って、限りなく生存率低い中で、『生かされた』という感覚になっているんですよ。お子さんに手や足のないという方などが勇気づけられたといってコメントしてくれるのを見て、単に普通の生活をしていることを公開するだけで勇気づけられる人がいるのなら、やらなきゃいけないことなのかなって」

普通の生活の裏には、絶大なる努力がある。その努力は、怪我をしたからこそ気づいた「圧倒的なプラスを数えること」の考え方に支えられていた。

その存在を支えにしてきたという乙武氏と対談。FRIDAYデジタルにて近日公開予定です。
山田さんが一気読みしたという『四肢奮迅』