以下、その会話を筆者が意訳してみた。

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ウィンフリー:あなたは今までの人生でずっと美男子ですよね。小さな男の子のときから小さな美男子だったわけで。小さな頃から美貌があなたの武器になると思っていましたか?

ブラピ:えー、真面目に聞いているの? 自分のルックスが強みにも弱みにもなるとは小さな頃から自覚していましたね。確かに色々なチャンスを与えられましたし……。

ウィンフリー:弱みとは具体的に何ですか?

ブラピ:うぬぼれることですね。それに、ちゃんとした試練が与えられないことです。ほかの人には与えられなかったチャンスを私だけが与えられたこともあって、それは苦い経験でした。

小さな頃は眠りにつくまで母と色々とおしゃべりするのが日課だったんですが、「なぜ世界は不公平なの?」と彼女に聞いたことがあったんです。すると彼女は、世界は不公平なもの。だからあなたには(他の人よりも)もっと責任がある、と答えました。この言葉は私の頭のどこかにいつもあるんです。

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ブラピが育ったミズーリ州は奴隷制度に反対した北部と賛成した南部の境界線にちょうど位置することから、北部と南部の価値観が衝突し、さまざまなプロテストや抵抗を育んできた歴史がありながらも、人種差別がいまだに根強く残っている土地だという。

経済的にも恵まれた中流家庭で育ったブラピは小さな頃から周囲に可愛いだのイケメンだのとちやほやされる一方、アフリカ系アメリカ人に対する差別を目撃してきたに違いない。高校のカウンセラーとして働いていたブラピの母親は、敬虔なバプティスト(キリスト教プロテスタントの一派)でキリスト教の保守的な価値観でブラピを育てた。彼女は賢明にも、その美貌のせいで特別扱いされる息子に、特権を享受する側に生まれたきた者には社会を改善する責任があると教えてきたのだ。

第76回ヴェネツィア国際映画祭で『アド・アストラ』が上映される前のレッドカーペットに立つブラッド・ピット〔PHOTO〕Getty Images

近年、ハリウッドは多様性を打ち出してきたが、ヒスパニック系、アジア系、中東系などの人種や多様なセクシュアリティをテーマにした作品はまだまだ少なく、女性の映画監督も極端に少ない。白人特権階級にいるブラピだからこそ、白人男性至上主義のハリウッドを変え得る力をもっているのかもしれない。

劇場でブラピを見る機会が少なくなるのは残念だが、プロデューサーとしての彼の手腕にこれからも注目していきたい。