『ムーンライト』以降、アフリカ系アメリカ人監督によるアフリカ系キャストのマーベル作品『ブラック・パンサー』(2018)が世界歴代興行収入で11位(2019年11月1日現在)という大成功を収めたうえ、2019年のアカデミー賞では衣装デザイン賞、作曲賞、美術賞の3冠を達成。そのほか、助演男優賞は『グリーンブック』のマハーシャラ・アリ、助演女優賞は『ビール・ストリートの恋人たち』のレジーナ・キング、脚本賞は『ブラック・クランズマン』のスパイク・リーなど、2019年のオスカーはアフリカ系アメリカ人の大躍進の年となった。

こうして振り返ってみると、ブラッド・ピット率いるPlanBが制作した『それでも夜は明ける』と『グローリー/明日への行進』が、ハリウッドにおけるアフリカ系アメリカ人の躍進の礎を築いたといっても過言ではない。

なぜブラピは白人至上主義に対抗したのか

当時付き合っていたジェニファー・アニストンと、カンヌ映画際(2004年)に参加するブラッド・ピット〔PHOTO〕Getty Images

ブラッド・ピットは、なぜこれらのような人種差別をテーマにした作品を積極的に世に生み出しているのか。金髪碧眼、剛健な肉体、角ばった顎をもつアングロサクソン的な男らしい美貌に恵まれ、俳優としても比較的若いうちに大成功を収めている。恋愛遍歴も、ジュリエット・ルイス、グウィネス・パルトロー、ジェニファー・アニストン、アンジェリーナ・ジョリーら人気女優たちとの華やかなものだ。

白人男性の完璧な美貌、潤沢な資産、きらびやかな成功と恋愛……彼こそがハリウッドの権力の中枢にいる白人男性を体現しているようではないか。ハリウッドの中心にいる彼が、なぜ白人男性至上主義に対抗したのかーー。

『グローリー/明日への行進』の共同制作者でもある、人気司会者で女優のオプラ・ウィンフリーのトーク番組に2004年に出演した際に繰り広げられた会話に、そのヒントがあるように思う。