プレッシャーを「使命感」に置き換える

「広告塔」という言葉が浮かんだ。そうだ、私は「乙武義足プロジェクト」の広告塔なのだ。今日撮影するのは、このプロジェクトのいわばプロモーションビデオなのだ。私は、両足にかかるプレッシャーを「使命感」という言葉に置き換えた

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遠藤氏が不在の間も、ある人は義足のチェックで、ある人は撮影ポイントの確認で、それぞれが最終準備のために動き回っている。私だけが手持ち無沙汰で、待ち時間がやけに長く感じられた。ふだんはまず感じることのない胃の痛みが煩わしかった。
 
遠藤氏が到着し、むき出しだった足部にコンバースのスニーカーが履かされた。黒のキャンバス地の靴紐がないタイプ。うん、気に入った。

「乙武さん、よろしくお願いします」
 
さあ、プロモーションビデオの撮影だ。北村が私の両足にシリコンライナーを履かせ、遠藤氏がロボット義足を装着する。最後に、膝が曲がらない状態になっていることを確認した。

北村が私の脇を支えて身体を起こす。なるほど、スニーカーを履くとこんな感じなのか。たしかに靴底は平坦で、これまでと重心のバランスが変わったような気はしない。だが、やはり靴の重みがずっしりと感じられる。足を振り上げるのが、これまで以上にしんどそうだ。
 
緊張は極限に達していたが、私は自分に言い聞かせた。

「俺は本番に強い男だ」  

小学校の運動会、準主役を演じた学芸会、中学のバスケ部の試合、そして大学受験。いつも「ムリに決まってる」と言われながら、逆境をはねのけてきたじゃないか。
 
最後にプロジェクトチームのみんなの顔を見た。

「じゃあ、立ち姿の撮影からお願いしまーす!」

鎌田氏のかけ声とともに、全員が所定の位置につく。私は第二レーンのスタートラインから10メートルの地点で仁王立ちになり、バランスをとった。
 
3台のカメラがスタンバイしている。北村が私の肩から手を離し、全員がカメラの後ろ
にまわった。