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元経済ヤクザがリポート「欧州金融ダークサイド最前線」

暗闘の日本への飛び火に備えよ
ブレグジットが来年1月末まで延期となった。英国のEU(欧州連合)離脱劇が世界で起こっている「文化衝突」の一端であると見ている日本人は少ないと思うが、隣国韓国で起こっていることも同様だと私は考えている。国際金融の住人にとって重要なのは素性を問わずにマネーを扱う金融の聖地「シティ」の行く末だ。白い金を扱う窓口は内定したが 、黒い金のメインバンクを巡っては「死」を伴う暗闘劇が繰り広げられている。欧州から帰国したばかりの元経済ヤクザの私が、その最前線をリポートしよう。

ブレグジット期限延長の経緯

10月28日に、EUは、ブレグジットの期限を2020年1月31日に延期することで合意した。まずはその流れを整理するところから始めよう。

2016年6月に国民投票が行われた結果、イギリスのEU離脱が決定した。そして翌17年3月29日に、EU離脱を規定するリスボン条約(欧州連合条約および欧州共同体設立条約を修正するリスボン条約)の50条を発動。EU側に離脱を通告する。

だが1973年のEC(欧州共同体)加盟から43年続いたヨーロッパ大陸との関係解消は難航を極める。英国とEUは離脱交渉を開始し、18年11月に一度合意に至ったが、この合意案にイギリス議会がノーを突きつけたのだ。

問題になったのは英領北アイルランドとアイルランドとの国境問題である。カソリックとプロテスタントの宗教対立から、60年代に北アイルランド紛争が勃発。IRA(アイルランド共和軍)とイギリス陸軍特殊空挺部隊SASのテロ対カウンター・テロの応酬は、血で血を洗う凄惨な戦いとなった。

両者の争いを終結させたきっかけが92年のEU発足だ。グローバリズムは国境、宗教、人種を統合しようとする「イズム」(思想)だが、EUはこの具現化だ。そのことが宗教による分断をなしにしてしまった。98年のベルファスト合意によってアイルランドと北アイルランドの間からは検問所が取り払われ、英領北アイルランドの市民は英国籍かアイルランド国籍、あるいは両方を取得できるようになる。

だがアイルランドはEU圏に留まるので、ブレグジット後には国境管理を復活させなければならない。それは同時に武装闘争の悪夢が復活するリスクを含む、ということで問題となっているのだ。

 

イギリス議会ではソフトブレグジット(EUと合意した上での離脱)か、ハードブレグジット(EUと合意せずに離脱)で紛糾。今年3月の延長、4月の再延長となり、5月には調整失敗を受けてテリーザ・メイ氏が首相の辞任を発表。7月にハードブレグジットを主張するボリス・ジョンソン氏が首相に就任した。ジョンソン氏は自身の休暇を使ってまとめようとしたものの失敗し、今回の再延長となった。