公立高校教師ユーチューバーの歴史本が、圧倒的支持を得ている理由

わかりやすさの秘密を本人に聞いた
飯田 一史 プロフィール

人事異動が私の動画配信のきっかけになったように、学校側の都合により途中で教師が交代することで授業の一貫性が失われたり、世界史で受験をしたい生徒がいるのに「世界史B」の講座が開講されなかったりすることもよくあります。また、教員の配置状況によっては日本史を大学で学んだ教員が世界史や地理も教えなければならない、といったこともあります。先生自身が不得手な科目を教わるのですから、興味深い授業にはなりません。当然生徒にとっても「つまらない科目」という印象が残ってしまうでしょう。

さらに言えば、一般的な高校では文系・理系が分かれるようになっており、理系から在学途中で文系に転じる、いわゆる「文転」をすると、社会科科目を独学で学ばざるを得なくなり、不利な状況に陥ってしまいます。動画授業があれば、これらの「学校の都合」による生徒の不利益をかなりのレベルで補完できます。

──しかも、営利目的の塾、予備校以外の場所で、YouTubeで広く無料公開されていることの意義は大きいですね。

山﨑 動画授業なら、大人の「学び直し」の需要も満たすことができます。特に私が教えている社会科は、その名のとおり、社会人になってからこそ深く理解できる内容が多い。実際にビジネスパートナーとしてまったく異なる文化を持った国の人と接してはじめて、異文化について知りたいと思う社会人も多いと思いますが、動画授業ならばそのニーズに応えることができます。

──動画授業を配信することによる周囲の反発などはありませんでしたか。

山﨑 むしろ感謝されることの方が多いです。教員は普段、授業を一人で運営しなければなりません。そのため、比較する対象や参考になる授業の実践例を得にくい環境にいます。先ほども言ったとおり「地理歴史科」の免許をもつ教員は、授業の割り当てによっては世界史も日本史も地理も教えなければなりません。研究授業などの機会はありますが、年に1、2回程度ですし、先輩の教員の授業を見学することも頻繁にはできません。そこで、私の動画を歴史の授業の参考や比較対象にしてくださる先生もいらっしゃるようです。

また、すべての教員がそうであるように、私も日本史・世界史・地理の全範囲、全時代にわたって熟知するということは不可能ですので、YouTubeのコメント欄で誤りを指摘していただいたり、よりわかりやすい解説の方法を教えていただけることがあり、実際の教育現場でのより良い授業づくりに生かすことができています。

やむをえず授業を欠席しても動画を見れば補完できますし、テスト前に復習もできますので、勤務先の生徒や保護者の反応もおおむね好評です。