公立高校教師ユーチューバーの歴史本が、圧倒的支持を得ている理由

わかりやすさの秘密を本人に聞いた
飯田 一史 プロフィール

世界史学習者の中には「出来事や人名を断片的に覚えてはいるが、全体の流れがいまいちよくわからない」という人が多いと思いますが、ムンディ先生は年号を使わない代わりに出来事を数珠つなぎに因果関係で解説していくので、歴史の流れがよくわかるうえに、結果的に、出来事や人名も驚くほど頭に残るんです。

私が類書を見たかぎりでは、学校教科書に準拠しながら、徹底して「年号を使わず」「古代から現代までを1つのストーリーで解説している」本は他にないと思います。その点は本書の大きな「売り」ですから、冒頭で図版を使ってしっかり説明することにしました。

書籍化するにあたって、ムンディ先生の動画のオリジナリティを活かしながら、いま需要が高まっている学び直しの社会人層に向けた「歴史入門書」として出版させてほしい、とムンディ先生にお話ししました。

山﨑 書籍を書くにあたっては、動画のエッセンスは盛り込みましたが、学校現場の授業とも、動画の授業シリーズとも違う方針を立てました。大人の学び直しに使える必要かつ十分な、バランスのとれた有用性の高い本を目指しています。

現在、書店に並んでいる歴史の本の多くは、専門家がマニアのために書いた「敷居の高い本」か、ビジュアルやイラストでごまかす「内容の薄い本」のどちらかがほとんどで、「吟味されたわかりやすい話し言葉できちんと説明をする」という本がなかったのです。

鯨岡 先生の動画は200本以上ありますから、その内容のすべてを書籍に入れることはできません。だから、先生とは最初から動画のコンテンツをそのまま書籍に移行させるということではなく、一から内容を新たに構成していただきました。先生のおっしゃるとおり、世界史の類書は歴史に関心のある中級者以上向けが多く、50~60代男性が中心の市場ですが、この本はメインターゲットの30代~40代から、高校生・大学生まで、男女を問わず、幅広く売れています。

 

「YouTube授業」が教育にもたらす効果

──営利目的で予備校が講師の動画を有料で提供していることはあっても、YouTubeに動画で授業を無料公開している現役教師はほとんどいません。ご自身で動画配信をやってみて、どんなことを感じていらっしゃいますか。

山﨑 動画授業の存在は、教育の多様化やコストダウンには今後、なくてはならない存在になると思います。一つのクラスに40人という現在の学校教育のしくみでは、どうしても不登校の生徒や、成績不振の生徒、逆に成績上位で学校のレベルに合わない生徒、突出した「天才肌」の生徒など、学校教育では手の届かない層が出てきてしまいます。

こうした、従来の学校教育では手が届かない層も、動画授業があれば一人でも授業が受けられ、自分のレベルに合った授業を見ることができるし、好きな科目の勉強に集中することができます。