公立高校教師ユーチューバーの歴史本が、圧倒的支持を得ている理由

わかりやすさの秘密を本人に聞いた
飯田 一史 プロフィール

例えば、時代が並行している中国の明・清と、オスマン帝国・ムガル帝国は教科書では連続して習うことになっているのですが、場所が全く違うため、流れがつかみにくい。そこで明・清は元の後、オスマン帝国はティムールの後、ムガル帝国は奴隷王朝の後、というように、地域ごとに分割して中国、西アジア、インドの歴史を俯瞰できるように教えています。この点は、実際の授業でも動画でも、書籍でも同じです。

私の動画が「全体で200回」となっているのは、年号などを使わずに「今、全体量の10分の1まで到達した」「今全体の半分である」と、授業の回数でだいたいの位置が直感的にわかるようにするためです。歴史という科目は、きちんと説明すれば、一回一回の授業では本来「わかりにくい」ということはありません。しかし、積み重ねるとストーリーの全体像が見えなくなることが一番の問題なのです。

私の授業が特にわかりやすいと言ってもらえるのだとすれば、私が赴任した学校は、特別支援学校や勉強が苦手な生徒が集まる学校、定時制高校など、歴史を苦手とする生徒が多い学校ばかりだったことがあるかもしれません。そうした生徒たちばかりのクラスでも、生徒の気持ちを引き付け、「歴史って面白い」と思ってもらえるように努力を積み重ねてきました。もし、私の本や動画を多くの人が評価してくださっているのであれば、そうした日々の積み重ねのおかげだろうと思います。

──先生の動画はどんなふうに認知されていったのでしょうか。


山﨑 7年かけて少しずつ再生回数が伸びていったので「ここでブレイクした」という時期はありません。学校の考査シーズンに合わせて再生回数が伸びているので、テスト前に見る高校生たちの口コミが大きいのではないかと思います。

 

書籍は「社会人の学び直し」を狙った

──どのような経緯で書籍化に至ったのでしょうか。

鯨岡 これまで私は編集者として主にビジネス書や自己啓発書を手がけてきましたが、以前から世界史ものの書籍も作ってみたいと考えていました。そんな中、2017年11月にムンディ先生(山﨑氏)が新聞で「公立高校教師なのにYouTubeで授業を無料公開している先生」として取り上げられているのを見かけたんです。さっそく、ムンディ先生の動画を視聴して、「これはすごい!」と思い、すぐにムンディ先生にコンタクトを取りました。

なんでムンディ先生の授業動画に感動したかというと、年号を使っていなかったからです。高校時代、私は世界史の年号の語呂合わせが書かれた参考書を買って年号を丸暗記し、そこに人名や出来事を関連付けて覚えていたんです。だから、ムンディ先生の年号を使わない授業を観て「なんだこれは?」と衝撃を受けたんです。