「宇崎ちゃん」献血ポスターはなぜ問題か…「女性差別」から考える

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牟田 和恵 プロフィール

条約には強制性はないし、基本計画や自治体のものもあくまで「手引き」「ガイドライン」で、法や条例そのものではないし罰則もない。国や公共団体にはとくに遵守が求められるだろうが、一般の企業や商店を直接に縛るものでもない。

しかし私企業であれ、広告を出すにあたっては公共性を一切無視するわけにはいかないだろう。企業イメージにかかわるし、コンプライアンス意識が問われるから、まっとうな企業なら配慮は必須だ。

赤十字社はましてや日本赤十字社法による認可法人であり、公共性はじゅうぶん高いのだから、今回の事態は遺憾だ。上述の手引きやガイドラインは考慮されていなかったのかなどこの広告を出すに至った経緯を検証し今後の改善を図ってもらいたい。あわせて一般の企業も、広報にあたってはこうした観点からのジェンダーチェックを事前に行うことを常識化していただきたいものだ。

〔PHOTO〕iStock
 

「個人の気持ち」の問題なのか?

これで「話は終わり」のはずなのだが、実際はそう簡単にはいっていない。まず問題を指摘された当の赤十字社は、「漫画ファンの若い人向けに作った」とコメントしているが(10月30日付、朝日新聞デジタル)事実として誰もが目にする場所に掲示されていたわけだから、少なくとも「それなのに設置場所について不注意であった」と反省すべきだろう。

このキャラとコラボするにしても、もっと穏当な絵柄をポスターにして、「献血していただいたファンの方には特製クリアファイルを差し上げます」とでも書いておけば想定のファンには意図はちゃんと伝わっただろう。

この件での騒動で明らかになっているのは、多くの人々に、女性差別撤廃条約やそれにもとづいて国や自治体が取り組む、女性差別撤廃に向けた取り組みの中身がまったく理解されていないことだ。ツイッターを見ていると、弁護士や評論家と称する人たちにさえ「個人の気持ちの問題」「感じ方の違いにすぎない」「表現の自由を侵すな」等の発言があったのにはまことに頭の痛い思いがした。