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戦慄…乳児「揺さぶり虐待」を疑われた祖母が、逆転無罪勝ち取るまで

「揺さぶられっ子症候群」という罠

10月25日、大阪高裁で画期的な逆転無罪判決が下された。生後2か月の乳児が突然死したこの事件で、争点となったのはその「死因」。祖母による「揺さぶり虐待」か、それとも「病気」だったのか。検察は、一貫して否認する祖母を尻目に、医学鑑定を提出。だが裁判長はその信用性に厳しい批判を向けた。鑑定が依拠した「乳幼児揺さぶられ症候群」の考え方にも、疑惑のまなざしが向けられている――。

 

1年3カ月に及ぶ拘置所生活

「ありがとうございました、本当にありがとうございました……」

裁判長による判決の読み上げが始まった直後、 証言台の前に立っていた被告人の山内泰子さん(69)は、涙声でそう言いながら、何度も頭を下げた。

10月25日、大阪高裁1003号法廷。

傍聴席に駆け付け、判決を見守っていた山内さんの娘や孫たちも「被告人は無罪」というその言葉を聞いたとたん、嗚咽を漏らしながらハンカチで顔を覆っていた。

円満な家族に突然襲いかかった赤ちゃんの突然死と「祖母逮捕」の衝撃。その後に待っていたのは、メディアによる実名報道、厳しい取り調べ、1年3カ月にも及ぶ拘置所での勾留生活、そして、実刑判決だった。

世間の冷たい視線にさらされながら、極度の緊張状態で過ごした3年半。その苦しい歳月を乗り越え、今、まさに一審と真逆の判決を聞きいているこの家族は、これまでの日々をどのような思いで振り返っているのだろうか……。

1時間半に及ぶ判決文の読み上げを終えた裁判長は、閉廷間際、山内さんにいたわりのまなざしを向けながら、静かな口調でこう言った。

「あなたが暴行を加えたことは、間違いである、ということです。だいぶおつらい思いをしたと思います……」

無罪判決後の山内さん一家。中央スーツの女性が山内さん〔PHOTO〕著者撮影