人気イラストレーターの松尾たいこさんは、最近グルメ雑誌でひとりで行けるお気に入りのレストランやカフェ、バーの紹介にも登場します。しかし、かつてはひとりでランチをすることすらできなかったのです。

それが怖かったのはなぜか、そしてどのようにできるようになり、それで松尾さんがどのように変わったのかを伝えてもらいました。

近所のバー「スパイス&ワイン エルド」でのひとりごはん。お酒とアラカルトを楽しめるお店が好きです 写真提供/松尾たいこ

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初のひとりランチは上京して10年後

「ええっ!」とよく驚かれるのですが、かつての私はひとりでランチに行くことができませんでした。会社員の時にも、大きな会社だったので職場で注文するお弁当を食べたり、同僚と社内の食堂に行ったりしていて、外で食べる機会がなかったのです。

いまでは積極的にひとりごはんを楽しみ、そのことをブログや食べログ著名人コーナーに持っているページに書いたり、お一人様におすすめのお店について雑誌の取材を受けたりしているというのに。

いま住んでいる代々木上原界隈には、ひとりでもくつろげる飲食店がとてもたくさんあり、週に一度は夜も含めてひとりごはんを楽しんでいる自分。しかし、それは以前からは想像もできない姿です。

1998年に絵の勉強をするために東京に出てきてからも、ひとりランチはできませんでした。友人を誘って行くか、あるいはお店で買ったパンなどを公園で食べていました。ランチぐらいひとりでしてみたい誰かに頼らないと動けない部分を少しでも減らしたい、そんな気持ちはありました。
ひとりでできることが増えればそのぶん私は人に合わせることなく自由に行動することができます。

でも結局私が初めてひとりランチをしたのは、東京に出て10年近く経ってからでした。

それまでは、前回の記事に書いたように、外見のコンプレックスを少しずつ減らすことに頑張っていたので、それ以外の部分にまで手が回らなかったのです。