連立相手がいない
10月27日、旧東独のチューリンゲン州で5年に一度の州議会選挙が行われた。
いろいろな意味で荒れることが予想されていた州選挙だが、蓋を開けてみたら、実際、大変なことになっていた。長くドイツに住んでいる私も、テレビのリポーターたちのあそこまで深刻な表情は初めて見たほどだ。
1990年の東西ドイツの統一以来、ずっと第1党を保ってきたCDU(キリスト教民主同盟)は、今回、得票率21.8%で3位に転落した。CDUの州首相候補、マイク・モーリング氏は、緊張と失望で青ざめていた。

ただ、チューリンゲン州で、この5年間、政権を握っていたのは、CDUではなく、左派党だった(前回の得票数は2位だったが、連立で左派政権を立てた)。しかし、その左派党の現首相、ボド・ラメロウ氏も、今回は堂々31.0%で第1党に躍り出たというのに、やはり緊張を隠しきれない様子だった。
というのも、連立仲間であるSPD(社民党)と緑の党がひどく落ち込んだため、これまでの連立では過半数を取れなくなってしまったからだ。

では、どのように過半数を取ればいいのかは闇の中。選挙速報ではコメンテーターが連立の予想を立てられないまま、「こんな複雑な状況は、戦後の歴史始まって以来だ」と頭を抱えた。
事態が袋小路に陥ってしまった一番の原因は、AfD(ドイツのための選択肢)の躍進である。AfDは23.4%の得票率で、第2位につけていた。
AfDとは、これまであらゆる政治家、メディア、有識者と呼ばれる人たちが蛇蝎のごとく忌み嫌い、蔑み、弾劾してきた党である。その手前、どの党もAfDとだけは連立するわけにはいかない。